ヨーネ菌PPE遺伝子組換え抗原を用いたヨーネ病のインターロイキン10検査法

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要約

ヨーネ菌に対して細胞性免疫応答を強く誘導するPPE family proteinは、IL-10産生誘導能を有し、その組換え抗原Map41はヨーネ菌感染に対して感染早期に強くIL-10を産生することから、ヨーネ病早期検査法への応用が可能である。

  • キーワード:ヨーネ菌、IL-10、遺伝子組換え抗原、PPE family protein、リアルタイムRT-PCR
  • 担当:動物衛生研・ヨーネ病研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-7708
  • 区分:動物衛生
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

鳥型結核菌の一亜種であるヨーネ菌(Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis)は、ヨーネ病の原因菌であり、本病は法定伝染病の中で最も経済的被害の大きい細菌性疾病である。菌の分離培養や抗体検査による摘発・淘汰により国家防疫を推進してきたが、感染早期に高感度かつ特異的に感染牛を見つける検査法の開発・改良が必要である。そこでヨーネ菌に対する細胞性免疫応答を指標にインターロイキン10(IL-10)産生誘導能を有する抗原を同定し、その遺伝子組換え抗原を用いて、ヨーネ菌感染牛の早期検査法の開発を目指す。

成果の内容・特徴

  • ヨーネ菌遺伝子発現ライブラリーから、インターフェロン・ガンマ(IFN-γ)誘導能を有するタンパク質PPE family proteinを同定し、この組換え抗原Map41はヨーネ菌感染牛末梢血細胞に対してIFN-γだけでなく、IL-10も産生誘導する。また、Map41抗原刺激によるIL-10産生細胞はマクロファージである。
  • 組換え抗原Map41で牛の血液細胞を刺激した時に産生される培養上清中のIL-10濃度を遺伝子組換えウシIL-10を標準品として用いたELISA法により測定する。従来法である菌の分離培養や抗体検査では感染後期にしか陽性とならないが、実験感染牛血液細胞のMap41に対するIL-10産生を経時的に調べると、感染2週後から増加し、感染2ヶ月後から陽性となるIFN-γ検査よりさらに早期にヨーネ菌感染を検出することができる(図1)。
  • 各種抗酸菌接種子牛の末梢血細胞でのMap41抗原刺激によるIL-10産生は、ヨーネ菌接種子牛において明らかに高い(図2)。
  • モルモットに各種抗酸菌を接種し、その脾細胞をMap41で刺激したときのIFN-γおよびIL-10のmRNA発現をリアルタイムRT-PCRで定量的に解析すると、IFN-γの発現は、ヨーネ菌を含む鳥型結核菌接種群で高いのに対して、IL-10の発現は、ヨーネ菌接種群でのみ特異的な上昇が認められる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 遺伝子組換えウシIL-10を標準品として用いたELISA法は、ウシIL-10濃度の測定に利用できる。
  • 組換え抗原Map41によるIL-10産生は、ヨーネ菌感染牛で早期に増加し、他の抗酸菌感染牛での産生に比べて強いことから、ヨーネ病の早期診断および特異性の高い診断法に応用可能である。
  • 組換え抗原Map41がヨーネ菌感染早期に強くIL-10産生を誘導することは、ヨーネ菌の宿主感染機構を解明する知見となりうる。

具体的データ

図1 実験感染牛におけるIL-10検査成績と

図2 各種抗酸菌接種子牛におけるMap41抗原刺激によるIL-10産生応答

図3 モルモット脾細胞におけるMap41抗原刺激によるIFN-γ及びIL-10のmRNA発現

その他

  • 研究課題名:ヨーネ病発症機構の解析と診断技術の高度化
  • 中課題整理番号:322f
  • 予算区分:委託プロ(BSE・人獣)、基盤
  • 研究期間:2003~2009年度
  • 研究担当者:永田礼子、吉原一浩、森 康行
  • 発表論文等:
    1) Nagata R. et al. (2010) Vet. Immunol. Immunopathol. 135:71-78
    2) 永田(2008)日本家畜臨床感染症研究会誌、3(3):119-125