わが国で摘発された非定型牛海綿状脳症プリオンの牛への伝達性
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
わが国で摘発された非定型牛海綿状脳症プリオンは牛への伝達性をもち、定型牛海綿状脳症プリオンより強い病原性を示す。
- キーワード:プリオン、非定型BSE
- 担当:動物衛生研・プリオン病研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-7708
- 区分:動物衛生
- 分類:行政・参考
背景・ねらい
近年、従来の牛海綿状脳症(C型BSE)と異なる性状を示す非定型牛海綿状脳症(非定型BSE)が、各国で報告されている。異常プリオン蛋白質(PrPSc)の分子量により、非定型BSEはH型とL型の2種類に分類される。日本で摘発されたL型に類似した2例目の非定型BSEの性状解析を目的として、自然宿主である牛3頭に脳内接種を行い、その性状を調べる。
成果の内容・特徴
- C型BSEプリオン脳内接種牛は平均675日で起立不能となるのに対し、非定型BSEプリオン脳内接種牛は平均486日で起立不能となる。
- 接種牛の脳乳剤を蛋白質分解酵素処理後に、PrPScをウエスタンブロット法で検出したところ、非定型BSEプリオン接種牛由来のPrPScの分子量は、C型BSEプリオン接種牛のそれと比較して僅かに小さい(図1a)。また、PrPScの糖鎖パターンも、両者に違いがみられる(図1b)。
- 非定型BSEプリオン接種牛の脳における空胞変性は、C型BSEプリオン接種牛のそれと比較して強い(図2a)。
- 非定型BSEプリオン接種牛では砂粒状のPrPSc沈着(図2b)とPrPアミロイドプラークが特徴的である。
- 非定型BSEプリオン接種牛の大脳皮質におけるPrPSc蓄積は、C型BSEプリオン接種牛のそれと比較して顕著である。
以上の結果は、非定型BSEプリオンは牛へ伝達可能であり、性状はC型BSEのそれとは異なっていることを示す。
成果の活用面・留意点
- 今回脳内接種で明らかになった非定型BSEプリオンの牛への伝達性のリスク評価のため、牛への経口接種実験を実施している。
具体的データ


その他
- 研究課題名:プリオン病の防除技術の開発
- 中課題整理番号:322d
- 予算区分:委託プロ(BSE)
- 研究期間:2008~2009年度
- 研究担当者:岩丸祥史、福田茂夫(北海道)、今村守一、舛甚賢太郎、松浦裕一、清水善久、河西和雄、倉知恵美、舒 宇静、村山裕一、萩原健一(感染研)、佐多徹太郎(感染研)、毛利資郎、横山 隆、岡田洋之
- 発表論文等:Fukuda S. et al. (2009) Microbiol. Immunol. 53(12):704-707