子牛のアカバネ病の移行抗体消失の月齢は地域によって異なる

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要約

アカバネ病の移行抗体が消失する時期は、東日本に比較して、九州と西日本では遅い。このことは、今後子牛へのワクチン接種を検討する上で有用な情報となる。

  • キーワード:アカバネ病、移行抗体、おとり牛
  • 担当:動物衛生研・疫学研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-7708
  • 区分:動物衛生
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

2006年に九州においてアカバネウイルスの子牛への感染が流行し大きな被害が生じた。このような子牛の被害を防止するためにはワクチン接種を検討する必要がある。子牛にワクチン接種する場合には、母牛から移行したアカバネウイルスに対する抗体が消失した後に実施しなればならないが、その消失時期はよくわかっていない。このため、全国の子牛の抗体検査データを用いて、アカバネ病移行抗体の消失時期を推定し、地域差や牛の種類による差を比較する(図1)。

成果の内容・特徴

  • 西日本と九州で飼養されている子牛の方が、東日本の子牛より1.17倍移行抗体が消失する時期が遅い。また、乳用牛よりも肉用牛の方が1.11倍移行抗体が消失する時期が遅い。
  • 90%の確率で子牛から移行抗体が消失する月齢は、東日本の肉用牛では4.1ヵ月齢、西日本と九州の肉用牛では4.8ヵ月齢であると推定される(図2)。また、同様に乳用牛については、東日本では3.7ヵ月齢、西日本と九州では4.3ヵ月齢であると推定される(図3)。
  • 移行抗体の消失月齢の地域差は、西日本や九州では東日本に比べて、母牛のアカバネウイルスへの曝露頻度が高いこと、ワクチン接種頻度が多いことなどが関与していると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 子牛の移行抗体はアカバネ病ワクチンの効果を阻害するため、これらの結果は子牛へのワクチンの応用を検討する上で有用な情報となる。
  • 現在市販されているアカバネ病ワクチンは異常産の予防用として承認されているため、子牛用として用いるためにはその有効性などについてさらなる検討を行う必要がある。

具体的データ

図1 比較した地域区分

図2 肉用牛における月齢別抗体保有確率の推定曲線

図3 乳用牛における月齢別抗体保有確率の推定曲線

その他

  • 研究課題名:疾病及び病原体の疫学的特性解明による防除対策の高度化
  • 中課題整理番号:322h
  • 予算区分:人畜共通感染症等危機管理体制整備調査等委託事業
  • 研究期間:2007~2008年度
  • 研究担当者:筒井俊之、山本健久、早山陽子、秋葉康弘、西口明子、小林創太
  • 発表論文等:Tsutsui T. et al. (2009) J. Vet. Med. Sci. 71(7):913-918