免疫染色による異常プリオン蛋白質検出のための抗原賦活化法の改良

要約

牛海綿状脳症罹患牛の腸管神経叢に蓄積される異常プリオン蛋白質は、適切な抗原賦活化(150mM水酸化ナトリウム、60°C、10分間)を施した免疫組織化学的手法により、容易に検出できる。

  • キーワード:抗原賦活化、免疫組織化学、BSE、プリオン、牛
  • 担当:動物衛生研・プリオン病研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-7708
  • 区分:動物衛生
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

ホルマリン固定パラフィン包埋組織では、ホルマリンによる架橋反応により抗原が変化するため、免疫組織化学的な異常プリオン蛋白質(PrPSc)検出には適切な抗原賦活化が必要である。通常、抗原賦活化にはオートクレーブ法が用いられるが、処置時間が長く、切片が剥がれたり組織の歪みが生じる。また、正常な腸管神経叢では非特異的反応が生じ、正常プリオン蛋白質とPrPScの鑑別には熟練を要する。そこで、従来の化学的修飾による抗原賦活化法を改良しPrPScのシグナル感度の増強を図るとともに、牛海綿状脳症(BSE)野外発生例の腸管神経叢におけるPrPSc検出への応用を試みる。

成果の内容・特徴

  • 特別な器具機械を用いずに短時間の化学的修飾で抗原賦活化が可能である(図1)。
  • 水酸化ナトリウム濃度と反応温度の上昇に比例して、PrPSc検出感度は増大する(図2)。
  • 150mMの水酸化ナトリウム(NaOH)に60°Cで10分間反応させると、PrPScが最も効果的に検出される。
  • この反応条件では非特異反応も消失し、BSE野外発生例の腸管神経叢で効率よくPrPScが検出される(図3)。

成果の活用面・留意点

  • PrPSc検出のための免疫組織化学的検索に有用である。
  • シラン処理スライドガラスを使用する必要がある。
  • PrPScの全てのエピトープの反応性を増強できないことから、事前に抗体の検討が必要である。

具体的データ

図1.改良抗原賦活化法のフローチャート

 

図2.水酸化ナトリウム濃度ならびに反応温度によるPrPSc 検出感度の影響

 

図3.腸管神経叢でのPrPSc 検出

その他

  • 研究課題名:プリオン病の防除技術の開発
  • 中課題整理番号: 322d
  • 予算区分:委託プロ(BSE)
  • 研究期間:2009~2010年度
  • 研究担当者:岡田洋之、岩丸祥史、今村守一、舛甚賢太郎、横山隆、毛利資郎
  • 発表論文等:1) Okada, H. et al. (2010) J Vet Med Sci 72 (11): 1423-1429