アカバネ病を媒介するウシヌカカは気温10°C以上で活動する
要約
ヌカカの飛翔行動を観察するための実験装置を開発して調べたところ、アカバネ病を媒介するウシヌカカは気温10°C以上で飛翔行動を開始する。
- キーワード:ウシヌカカ、飛翔行動、アカバネ病
- 担当:動物衛生研・疫学研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-7708
- 区分:動物衛生
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
妊娠牛に流産や死産などを引き起こすアカバネ病は、日本で周期的・地域的に流行が繰り返されているが、国内での流行様式はほとんど明らかにされていない。アカバネ病の病原体であるアカバネウイルスは、体長1~2mmの小さな吸血昆虫であるウシヌカカによって主に媒介される。アカバネ病の流行メカニズムを明らかにするためには、媒介昆虫であるウシヌカカの生態、特に気象などの野外環境が行動に及ぼす影響を解明する必要がある。このため、ヌカカの飛翔行動を観察する実験装置を開発し、気温の変化がウシヌカカの活動に与える影響を明らかにする。
成果の内容・特徴
- ヌカカの飛翔行動を観察するために開発した実験装置はアクリルボード製で、円筒型の通路でつながれた2室からなり、一方の部屋には温度計、もう一方の部屋にはヌカカを引きつけるためのブラックライトが設置されている(図1)。
- 開発した実験装置を用いて、西日本を中心に分布するウシヌカカと対照として全国に広く分布するミヤマヌカカについて、気温の変化が飛翔行動に及ぼす影響について調べる。
- 1回の実験に供試した40~50匹のウシヌカカの50%が飛翔する温度は18.1°C(95%信頼区間17.3-18.8°C)と推定された(図2)。この温度はミヤマヌカカの17.4°C(15.3-19.5°C)よりわずかに高かったが(図3)、その差は有意ではなかった。
成果の活用面・留意点
- ウシヌカカがアカバネ病を伝播するためには飛翔行動によって牛に到達することが必要であり、アカバネ病の地理的及び時期的な流行要因を検討する上で重要な情報となる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:疾病及び病原体の疫学的特性解明による防除対策の高度化
- 中課題整理番号:322h
- 予算区分:交付金プロ(飛来媒介昆虫)
- 研究期間:2009~2010年度
- 研究担当者:筒井俊之、早山陽子、小林創太、西田岳史、梁瀬徹
- 発表論文等:Tsutsui et al. (2011) Parasitology Research,108 (6): 1575-1578