Mannheimia haemolyticaの薬剤耐性の推移と血清型による耐性傾向の違い
要約
Mannheimia haemolyticaの薬剤感受性を調査したところ、2系統以上の抗菌薬に耐性を示す株が2001年以降増加している。また、血清型6型菌は、他の血清型に比較して薬剤耐性を示す株の割合が高く、複数系統の抗菌薬に耐性を示す傾向にある。
- キーワード:Mannheimia haemolytica、牛、血清型、呼吸器病、薬剤感受性
- 担当:家畜疾病防除・農場衛生管理システム
- 代表連絡先:電話 029-838-7708(情報広報課)
- 研究所名:動物衛生研究所・ウイルス・疫学研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
Mannheimia haemolyticaは牛の呼吸器病の主要原因菌である。呼吸器病治療には抗菌剤が使用されるが、M. haemolyticaはPasteurella multocida やHistophilus somniに比較して薬剤耐性菌の出現率が高い傾向にあり、抗菌剤治療の効果が顕著でない症例も認められる。このため本菌の薬剤感受性を調査することは、抗菌剤の適正な選択に資すると考えられる。
本研究では1991年から2010年に30道府県で、呼吸器病罹患牛から分離されたM. haemolytica計480株について薬剤感受性と血清型を調査した。
成果の内容・特徴
- 供試した16種類の抗菌薬に感受性を示した株は122株(33.1%)認められ、2系統以上の抗菌薬に耐性を示した株が、138株(37.4%)認められる。
- フロルフェニコール、コリスチンおよびセフェム系抗菌薬(セファゾリン、セフチオフル、セフキノム)は、M. haemolyticaに高い感受性が認められる(表1)。一方、ナリジクス酸とストレプトマイシンに対しては37.9%と39.0%の株が耐性を示す。
- 複数の抗菌薬に耐性を示す株の分離割合が2001年以降増加しており、6剤の抗菌薬に耐性を示す株も認められ、本菌の多剤耐性化が懸念される(図1)。
- これまで肺病変部から分離される本菌の70-80%が血清型1型または2型に属することが報告されている。しかし、近年血清型2型菌に換わって6型菌の分離割合が増加しており、2001年以降では分離株の40%以上が血清型6型に分類されている(表2)。
- 血清型6型菌は、他の血清型に比較して薬剤耐性を示す株の割合が有意に高く、複数系統の抗菌薬に耐性を示す傾向にある(図2)。
成果の活用面・留意点
- 薬剤感受性試験結果は必ずしも治療効果を反映している訳ではない。しかし、2001年以降、複数の抗菌薬に対して耐性を示すMannheimia haemolyticaが増加していることから、生産現場での薬剤の選択には、慎重な対応が必要と考えられる。
- 市販の感受性ディスク法で対応できる抗菌薬については、必ず薬剤感受性試験を実施し、使用薬剤を選択すべきと考えられる。
具体的データ




(勝田 賢)
その他
- 中課題名:農場衛生管理システム
- 中課題番号:170d2
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2011年度
- 研究担当者:勝田 賢、犬丸茂樹
- 発表論文等:勝田(2010)日本家畜臨床感染症研究会誌、5(2):33-39