ウエストナイルウイルスのNS1に対するモノクロ-ナル抗体を用いる競合ELISA
要約
新規に樹立されたウエストナイルウイルスのNS1に対するモノクロ-ナル抗体を用いることにより、日本脳炎ウイルスと交叉性が無く、微量の血清でも抗体測定可能な高感度のウエストナイルウイルスの競合ELISAが可能である。
- キーワード:ウエストナイルウイルス、NS1、競合ELISA、日本脳炎ウイルス、新興感染症
- 担当:家畜疾病防除・ウイルス感染症
- 代表連絡先:電話 029-838-7708(情報広報課)
- 研究所名:動物衛生研究所・動物疾病対策センター
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
ウエストナイルウイルス(WNV)は、日本脳炎血清型群ウイルスに属し、日本国内に常在する日本脳炎ウイルス(JEV)と血清反応において、交叉反応を示す。このため、WNVが日本国内に侵入した場合、血清診断において、JEVとの区別が困難である。そこで、この問題を解決するため、WNVに対する特異的モノクロ-ナル抗体を確立し、競合ELISAを開発する。
成果の内容・特徴
- WNVのNS1に対するモノクロ-ナル抗体(SHW-7A11)を新規に樹立する。
- このモノクロ-ナル抗体を用い、ウエストナイルウイルスの競合ELISAを開発した。
- SHW-7A11はWNVのNY-99株への特異性が高く、他の日本脳炎血清型群ウイルスにはほとんど反応しない(図1)。
- WNVとJEVを区別可能である。
- 一般的には、競合ELISAで使用する際には、血清は10倍以下の希釈が必要であるが(C-ELISA10)、SHW-7A11を用いた競合ELISAでは、100倍希釈の血清(C-ELISA100;必要血清量は1μl)でも、WNVの感染を判定可能である(図2)。この結果、開発したWNVの競合ELISAは、1ulの微量の血清でも診断を行うことが可能で、微量の血清しか得られない野鳥のウエストナイルウイルスのサーベイに用いることが可能である。
- WNV実験感染群において、競合ELISAでは感染21日目に全鶏が抗体陽性となったが、中和試験では全鶏が陽性となったのは35日目であった。106 PFUのWNV接種個体では、中和試験と比較して競合ELISAにより早期に抗体を検出した(図3)。
成果の活用面・留意点
- 野鳥のサーベイランスに使う場合は、野鳥の陽性・陰性血清を用いての検証、カットオフ値の設定が必要である。
具体的データ

その他
- 中課題名:ウイルス感染症の発症機構の解明と防除技術の確立
- 中課題番号:170a1
- 予算区分:委託プロ(人獣)
- 研究期間:2008~2010年度
- 研究担当者:清水眞也、広田次郎
- 発表論文等:Hirota J. et al. (2012) Clin Vaccine Immunol 19(2): 277-83