ブリリアントブルーG250は異常プリオン蛋白質蓄積を阻害する

要約

ブリリアントブルーG250(BBG)は、培養細胞表面の正常プリオン蛋白質の発現を低下させ、異常プリオン蛋白質(PrPSc)の蓄積を阻害する。BBGは、プリオン感染細胞モデルだけでなくマウスモデルにおいても、PrPSc蓄積を阻害する。

  • キーワード:プリオン、異常プリオン蛋白質蓄積阻害、ブリリアントブルーG250
  • 担当:家畜疾病防除・プリオン病
  • 代表連絡先:電話 029-838-7708(情報広報課)
  • 研究所名:動物衛生研究所・プリオン病研究センター
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

プリオン病は、ヒトおよび動物に発生する一群の致死性神経変性疾患である。現在までに、多くの異常プリオン蛋白質(PrPSc)蓄積阻害分子が報告されているが、プリオン病に対する治療法は確立されておらず、その治療薬開発は急務となっている。ブリリアントブルーG250(Brilliant Blue G250:BBG)は蛋白質の染色や定量分析に用いられる色素である。PrPSc蓄積阻害能を持つ既知の分子群(コンゴレッド、クルクミン)とBBGの分子構造との比較により、BBGにPrPSc蓄積阻害活性があることが予想される。そこで、プリオン感染細胞モデル、マウスモデルを用いてBBGのPrPSc蓄積阻害活性を検討する。

成果の内容・特徴

  • プリオン持続感染細胞の培養液中にBBG(図1)を添加し継代を行うと、PrPScの蓄積が減少し、検出限界以下となる(図2)。
  • BBG処理プリオン感染細胞の感染性は、PrPScの蓄積と同じく、著明に減少する(図2)。
  • BBG処理細胞の細胞表面では正常プリオン蛋白質の減少が認められる(図3)。正常プリオン蛋白質の細胞内輸送および局在の変化が、BBGのプリオン複製阻害活性に関与している可能性がある。
  • BBG はFukuoka-1株プリオン感染マウスへの腹腔内投与により、脳内のPrPSc蓄積を阻害する(図4)。

成果の活用面・留意点

  • BBGは蛋白質の染色や定量分析など、生化学分野で汎用されている試薬であるがPrPSc蓄積阻害活性を示したのは本研究が初めてである。BBGはプリオン病治療薬につながるシーズ化合物となる可能性がある。また、PrPSc蓄積阻害能を持つ分子の阻害機構を調べることは、未解明な点が多いプリオン増幅機構の理解につながる。

具体的データ

 図1~4

その他

  • 中課題名:プリオンの異常化機構の解明とBSE等のプリオン病の清浄化技術の開発
  • 中課題番号:170b2
  • 予算区分:科研費
  • 研究期間:2010~2012年度
  • 研究担当者:岩丸祥史、竹之内敬人(生物研)、村山裕一、岡田洋之、今村守一、清水善久、橋本款 (都医学研)、毛利資郎、横山隆、木谷裕(生物研)
  • 発表論文等:Iwamaru Y. et al. (2012) PLoS One 7(5): e37896