山羊胎子舌株化細胞の使用により口蹄疫ウイルス分離率が高まる

要約

新たに樹立された山羊胎子舌株化細胞ZZ-R 127による、口蹄疫ウイルス感染試験で得られた検体からのウイルス分離率および力価は、現行で使用される豚腎株化細胞IB-RS-2よりも著しく高い。

  • キーワード:ウイルス分離、株化細胞、口蹄疫
  • 担当:家畜疾病防除・国際重要伝染病
  • 代表連絡先:電話 029-838-7708(情報広報課)
  • 研究所名:動物衛生研究所・国際重要伝染病研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

山羊胎子舌株化細胞ZZ-R 127は、口蹄疫罹患動物から採取した水疱上皮を用いた検証により、口蹄疫ウイルスに高感受性であることが報告されている。しかし、野外においては口蹄疫罹患動物から水疱上皮を採取することが困難な場合が多い。そこで、感染試験で得られた、水疱上皮よりも採取が容易な血清、唾液、鼻汁、糞便および食道咽頭粘液を用いて、ZZ-R 127細胞の口蹄疫ウイルス分離検査における有用性を従来法である豚腎株化細胞IB-RS-2と比較検証する。

成果の内容・特徴

  • 牛、山羊および豚を用いた口蹄疫ウイルスO/JPN/2010 株の感染試験においてRT-PCR陽性であった血清、唾液、鼻汁、糞便および食道咽頭粘液合計235検体を用いたZZ-R 127細胞とIB-RS-2細胞によるウイルス分離率の比較では、ZZ-R 127細胞の分離率が、いずれの動物種においてもIB-RS-2細胞の分離率よりも著しく高い(表1)。特に、ZZ-R 127細胞においては食道咽頭粘液や糞便からウイルスが分離されるが、IB-RS-2細胞においてはこれらの検体からウイルスが分離されない。
  • 前述の臨床材料を用いたZZ-R 127細胞とIB-RS-2細胞による同一検体間のウイルス力価の比較では、ZZ-R 127細胞による力価の方が、牛においては3倍から30,000倍、山羊においては3倍から1,000,000倍、豚においては20倍から10,000倍高い。

成果の活用面・留意点

  • ZZ-R 127細胞が、水疱上皮以外の検体からのウイルス分離検査に有用であることが確認されたことは、病性鑑定を行う上で有用な知見である。
  • わが国における将来的な口蹄疫の発生時にZZ-R 127細胞を用いることで、現行法より高感度にウイルス分離検査を行うことが可能となる。
  • 野外検体を用いてZZ-R 127細胞の有用性をさらに検証する必要がある。

具体的データ

表1

その他

  • 中課題名:国際重要伝染病の監視技術の高度化と蔓延防止技術の開発・評価
  • 中課題整理番号:170a3
  • 予算区分:委託プロ(口蹄疫拡充)
  • 研究期間:2011~2012年度
  • 研究担当者:深井克彦、小野里洋行、北野理恵、山添麗子、森岡一樹、山田学、大橋誠一、吉田和生、菅野徹
  • 発表論文等:Fukai K. et al. (2013) J. Vet. Diag. Invest. 25(6):770-774