血清型2、6、10 型鳥パラミクソウイルスはワクチンベクターとして有望である
要約
血清型2、6、10型鳥パラミクソウイルスは、ニューカッスル病ワクチンが広く使用されている野外において、多頭羽に迅速かつ省力的に投与できる鳥インフルエンザワクチンのための遺伝子組換えベクターとして有望である。
- キーワード:鳥インフルエンザ、遺伝子組換えワクチンベクター、鳥パラミクソウイルス、ニューカッスル病ワクチン
- 担当:家畜疾病防除・インフルエンザ
- 代表連絡先:電話 029-838-7708(情報広報課)
- 研究所名:動物衛生研究所・インフルエンザ・プリオン病研究センター
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
現行の鳥インフルエンザワクチンは、不活化した鳥インフルエンザウイルス(AIV)を抗原としているため、1羽1羽の筋肉内または皮下に接種する必要があり、多頭羽に迅速かつ省力的に投与することが難しい。この問題を解決するために、噴霧や飲水を介して投与できるニューカッスル病ウイルスにAIVの赤血球凝集素遺伝子を組み込んだ遺伝子組換え生ワクチンが作製され、中国およびメキシコで使用されてきた。しかし、野外ではニューカッスル病ワクチンが広く使用されているため、ニューカッスル病ウイルスをベクターとする遺伝子組換え生ワクチンの効果が著しく阻害されることが明らかとなった。本研究は、ニューカッスル病ウイルスと同様に、噴霧や飲水を介して多頭羽に迅速かつ省力的に投与することが期待できる血清型2~10型パラミクソウイルス(APMV)について、ニューカッスル病ワクチンに対する血清抗体との交差反応性、ニューカッスル病ワクチンにて免疫された鶏における増殖性、病原性および抗体誘導能について検討し、鳥インフルエンザワクチンのための新しい遺伝子組換えベクター候補を選択することを目的とする。
成果の内容・特徴
- 血清型2、6、10 型APMV(それぞれchicken/Yucaipa/1956株、duck/Hong Kong/199/1977株、penguin/Falkland Islands/324/2007株)は、他の血清型のAPMVと比較して、ニューカッスル病ワクチン株であるB1株で免疫された鶏血清に対して、赤血球凝集阻止反応(HI)における交差反応性が低い(図1)。
- 106 EID50の血清型2、6、10型APMVを、ニューカッスル病ワクチンB1株で免疫された鶏に点眼投与すると、病原性を示すこと無く上部呼吸器粘膜において増殖する(表1)。
- 血清型2、6、10 型APMV は、ニューカッスル病ワクチンにて免疫された鶏に点眼投与することにより、APMV特異的抗体応答を誘導する(図2)。
成果の活用面・留意点
- 血清型2、6、10型APMV は、ニューカッスル病ワクチンB1株で免疫された鶏群に対する鳥インフルエンザワクチンのための遺伝子組換えベクターとして有望である。
- 血清型2、6、10型APMVのワクチンベクターとしての有用性の検討には、これらウイルスのリバースジェネティクス系を確立して、鳥インフルエンザウイルスの赤血球凝集素遺伝子を組み込んだ遺伝子組換えウイルスを作製して、ニューカッスル病ワクチンで免疫された鶏群における免疫誘導能を検討する必要がある。
具体的データ
その他