L型非定型BSEは緬羊に脳内接種で感染する

要約

L型非定型BSE感染牛脳乳剤を脳内に接種した緬羊は、明確な臨床症状や脳での重篤な空胞化を示さない。しかし、異常プリオン蛋白質は緬羊の脳に蓄積し、スクレイピー感染羊とは異なる蓄積形態や体内分布を示す。

  • キーワード:非定型BSE、プリオン、緬羊、伝達試験
  • 担当:家畜疾病防除・プリオン病
  • 代表連絡先:電話 029-838-7708(情報広報課)
  • 研究所名:動物衛生研究所・インフルエンザ・プリオン病研究センター
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

L型非定型BSEは脳内での空胞変性の頻度、異常プリオン蛋白質(PrPSc)の蓄積部位やその形態が定型BSEのそれらとは異なる。L型非定型BSEは発生の原因が不明で、自然に発生する可能性が示唆されているほか、牛やサルに感染性を示す。本研究では、L型非定型BSEの緬羊への伝達性並びにPrPSc蓄積の特徴を調べ、その感染リスク評価に資する知見を集約することを目的とする。

成果の内容・特徴

  • L型非定型BSEに感染した牛の脳乳剤を2頭の緬羊に脳内接種しても、992日まで臨床症状を示さない。
  • 接種後992日で剖検した緬羊では、脳内の空胞化は極めて軽微で、嗅結節、嗅覚皮質、大脳基底核、視床、中脳下丘核、蝸牛神経核に認められるが、大脳皮質、視床下部、海馬、中脳被蓋、橋、延髄、脊髄、小脳では認められない。
  • 中枢神経系全域の灰白質にPrPScが軽微に蓄積するが、L型非定型BSE感染牛に特徴的なアミロイドプラークの沈着は認められない(図1a)。
  • 三叉神経や副腎髄質(図1b)などの末梢神経系にもPrPScは蓄積するが(図2)、リンパ系組織では蓄積せず、スクレイピー感染羊とは異なる病態である。

成果の活用面・留意点

  • L型非定型BSEの緬羊への感染はスクレイピーや定型BSEのそれらと識別可能である。
  • 現行のTSEサーベランスで 型非定型BSEが感染した緬羊の摘発は可能である。

具体的データ

図1~2

その他

  • 中課題名:プリオンの異常化機構の解明とBSE等のプリオン病の清浄化技術の開発
  • 中課題整理番号:170b2
  • 予算区分:委託プロ(BSE)
  • 研究期間:2008~2012年度
  • 研究担当者:松浦裕一、岡田洋之、岩丸祥史、舛甚賢太郎、今村守一、毛利資郎、横山隆
  • 発表論文等:Matsuura Y. et al. (2013) J. Comp. Pathol. 149(1):113-118