BSEの感染性はウシ化マウスへの腹腔内投与により75日で判定できる

要約

プリオン蛋白質遺伝子をウシ型に置換したウシ化マウスのバイオアッセイでは、腹腔内投与後75日でBSEの感染性を検出できる。脾臓に蓄積した異常プリオン蛋白質は投与したBSEと類似の性質を示し、定型BSEとL型非定型BSEを識別できる。

  • キーワード:遺伝子改変マウス、BSE、感染性
  • 担当:家畜疾病防除・プリオン病
  • 代表連絡先:電話 029-838-7708(情報広報課)
  • 研究所名:動物衛生研究所・インフルエンザ・プリオン病研究センター
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

BSEプリオンの感染性は動物を用いた実験でのみ評価され、脳内接種後マウスが発病す るまで300日以上の期間を必要とする。ヒトクロイツフェルト・ヤコブ病プリオンでは、プリオン蛋白質遺伝子をヒト型に置換したマウスへの腹腔内投与で75日後にその感染性を評価できる。本研究では、プリオン蛋白質遺伝子をウシ型に置換したマウス(ウシ化マウス)を用いてBSEプリオン感染性の早期検出を検討する。

成果の内容・特徴

  • 定型BSE(C-BSE)やL型非定型BSE(L-BSE)感染牛脳乳剤をウシ化マウスの腹腔内に投与すると、75日後に脾臓のろ胞樹状細胞に異常プリオン蛋白質(PrPSc)が蓄積するが、脳にはPrPSc は蓄積していない(図1)。
  • L−BSE腹腔内投与ウシ化マウスの脾臓に蓄積したPrPScは、L-BSEに感染した牛脳やウシ化マウス脳と同様に、ウエスタンブロット法では2糖鎖バンドが優勢のパターンを示さず、脱糖鎖処理後の分子量がC-BSEより小さく、C-BSEとは異なる性状を示す(図2a,b)。
  • C-BSEやL-BSE感染脾臓乳剤をウシ化マウスの脳内に投与すると、牛脳乳剤を投与したウシ化マウスと同様にC-BSEあるいはL-BSEに特徴的な病理組織像を呈し、両者の識別が可能である。

成果の活用面・留意点

  • ウシ化マウスへ腹腔内投与する手法でBSEプリオンの感染性は迅速に評価できる。
  • 本手法でC-BSEとL-BSEを識別することも可能である。

具体的データ

図1~2

その他

  • 中課題名:プリオンの異常化機構の解明とBSE等のプリオン病の清浄化技術の開発
  • 中課題整理番号:170b2
  • 予算区分:委託プロ(BSE)
  • 研究期間:2008~2012年度
  • 研究担当者:松浦裕一, 石川有紀子, Robert Somerville (ロスリン研), 横山隆, 萩原健一(感染研), 山河芳夫(感染研), 佐田徹太郎(感染研), 北本哲之(東北大), 毛利資郎
  • 発表論文等:Matsuura Y. et al. (2013) Open J. Vet. Med. 3(1):79-85