口蹄疫ウイルスO/JPN/2010株の牛および山羊に対する病原性
要約
口蹄疫ウイルスO/JPN/2010株接種牛は接種1日後から舌、口唇、鼻および蹄に水疱を形成し、同居牛にも同居5日後から同様の症状がみられる。ウイルス接種山羊は接種3日後から蹄に水疱を形成し、同居山羊にも同居6日後から同様の症状がみられる。
- キーワード:口蹄疫ウイルス、感染試験、牛、山羊
- 担当:家畜疾病防除・国際重要伝染病
- 代表連絡先:電話 029-838-7708(情報広報課)
- 研究所名:動物衛生研究所・国際重要伝染病研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
2010年4月に宮崎県で10年ぶりに口蹄疫が発生し、終息までの約3か月間に合計292農場で発生が確認され、約30万頭の家畜が防疫措置として殺処分された。発生農場には、牛、豚および山羊が飼養されていたが、分離ウイルスの豚における病原性解析についてはすでに報告済みである(2011年成果情報)。そこで本課題では発生時に分離したウイルスを実験的に牛および山羊に接種し、臨床症状や体内におけるウイルス増殖や排泄および抗体産生の動態を解析し、その病原性を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 2010 年4月に宮崎県発生例の材料から分離された口蹄疫ウイルスO/JPN/2010株(106.2TCID50)を舌に皮内接種した牛は、接種1日後から舌、口唇、鼻および蹄に水疱を形成する(図1)。また、水疱形成が最初に確認された日(発症日)から唾液中および鼻汁中にウイルスを排泄する(表1)。
- ウイルス接種牛と接種1日後から同居させた健康牛2頭は、同居5および6日後から接種牛と同様の部位に水疱を形成する。また、発症日の3および4日前から唾液中および鼻汁中にウイルスを排泄する(表1)。
- O/JPN/2010株(106.2TCID50)を右前肢蹄冠部に皮内接種した山羊は、接種3および4日後から蹄に水疱を形成する。また、発症日の2および3日前から唾液中および鼻汁中にウイルスを排泄する(表2)。
- ウイルス接種山羊と接種1日後から同居させた健康山羊2頭は、同居6および8日後から蹄のほか舌、口唇、鼻に水疱を形成する(図1)。また、発症日の3および5日前から唾液中および鼻汁中にウイルスを排泄する(表2)。
- 山羊の水疱形成は牛よりも軽微であり、また発症日も遅れるが、唾液中や鼻汁中へのウイルス排泄期間は牛とほぼ同一である。
成果の活用面・留意点
- 牛では山羊よりも水疱形成が明瞭であり、発症日も早いことから、牛に対する臨床検査は本病の侵入およびまん延を確認する上で有用である。一方、山羊の水疱形成は牛よりも軽微であり、発症日も遅れるが、発症日よりも前に唾液中や鼻汁中へウイルスを排泄し、排泄期間も牛とほぼ同一であることから、入念な臨床検査が必要である。
- 本課題で得られた成績は、口蹄疫ウイルスの感染および病態の総合的な知見の一つとして蓄積され、今後の口蹄疫発生時の効果的な防疫対策に活用される。
具体的データ
その他
- 中課題名:国際重要伝染病の監視技術の高度化と蔓延防止技術の開発・評価
- 中課題整理番号:170a3
- 予算区分:委託プロ(鳥フル)
- 研究期間:2011~2012年度
- 研究担当者:小野里洋行、深井克彦、北野理恵、山添麗子、森岡一樹、山田学、大橋誠一、吉田和生、菅野徹
- 発表論文等:Onozato H. et al. (2014) Arch. Virol. 159(11):2901–2908