無線式ルーメン内留置型センサを用いた牛のルーメン収縮運動の検出

要約

新たに開発した経口投与型の無線式ルーメン内留置型センサにより測定したルーメン内容物の流動性とルーメン収縮運動はほぼ完全に同調し、非侵襲的に牛のルーメン収縮運動を検知することができる。

  • キーワード:ルーメンセンサ、無線センシング、ルーメン運動、流動性、牛
  • 担当:家畜疾病防除・病態監視技術
  • 代表連絡先:電話 029-838-7708(情報広報課)
  • 研究所名:動物衛生研究所・病態研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

乳牛や肉牛で大きな生産阻害要因となっている鼓脹症や第一胃食滞などのルーメン運動障害を主徴とした疾患を早期に発見するためには、日々変化している牛のルーメン運動を持続的にモニタリングできる技術の開発が必要となる。そこで、牛に負担をかけず非侵襲的にルーメン機能を無線で連続センシングできるセンサ端末を開発し、このセンサを恒常的にルーメン内留置させて、ルーメン収縮運動を検知できる技術の開発を行う。

成果の内容・特徴

  • 試作した経口投与型の無線式ルーメンセンサ端末(加速度センサ、長さ7cm、直径27mm、無線周波数315MHz、送信頻度1回/秒)は良好なデータ受信ができる(図1)。
  • センサを牛のルーメン内に持続的に留置させるためには、センサの重量密度を1.8g/cm3以上にする必要がある。
  • ルーメンセンサに搭載した加速度センサによって、牛のルーメン内容物の流動性を持続的にモニタリングすることができる(図2) 。
  • 牛のルーメン収縮運動を直接的に導出できる従来法(Force transducer法:外科手術で電極をルーメン漿膜面に縫着する観血的測定法)とルーメンセンサで得られる流動性変化を比較すると、両者の波形変化はほぼ完全に同調することから、ルーメンセンサによって牛のルーメン収縮運動を非侵襲的に検知することができる(図1)。
  • ルーメンセンサで得られる流動性変化とForce transducer法で得られるルーメンの収縮頻度の相関が高いことから、ルーメンセンサで牛のルーメン収縮運動を非侵襲的に精度良くモニタリングすることができる(図3)。
  • ルーメン運動の収縮頻度は採食時が最も高く、反芻、休息の順に低くなる(図2、3)。

成果の活用面・留意点

  • 本研究で開発したルーメンセンサは、経口投与が可能なことから牛に外科手術をすることなく非侵襲的にルーメン運動の変化を把握する事ができる。
  • 本システムの活用により鼓脹症や第一胃食滞などのルーメン運動障害を主徴とした疾患を早期に発見できる可能性があるが、応用にあたっては臨床データの蓄積が必要である。
  • 農場現場での実用化に向けて、センサの長寿命化やデータ解析の自動化などのシステム改良が今後の検討課題である。

具体的データ

図1~3

その他

  • 中課題名:罹病家畜の病態解明と発病監視技術の開発
  • 中課題整理番号:170c1
  • 予算区分:競争的資金(科研費)
  • 研究期間:2012~2014年度
  • 研究担当者:新井鐘蔵、伊藤寿浩(産総研)、岡田浩尚(産総研)、野上大史(九大)
  • 発表論文等:新井ら「牛の第一胃鼓腸症検出方法及び第一胃鼓腸症検出システム」特願2015-23112 (2015年2月9日)