フモニシンはトウモロコシの穂の中で局在している
要約
赤かび病を発症したトウモロコシの穂において、フモニシンの濃度が高いことがある。その穂は、病徴部位は非常に高い濃度のフモニシンが検出されるが、同じ穂でも無病徴部位のフモニシン濃度は低い。
- キーワード:赤かび病、トウモロコシ、フモニシン
- 担当:家畜疾病防除・飼料等安全性確保技術
- 代表連絡先:電話 029-838-7708
- 研究所名:動物衛生研究所・病態研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
国内産の飼料作物トウモロコシから、豚の肺水腫や馬の白質脳軟化の原因かび毒であるフモニシンが検出され、その拡大と急性毒性の発生が懸念されている。
トウモロコシのフモニシンは、黄熟期以降の穂において急増することが確認されている。また、登熟したトウモロコシの穂において、かびが外見上認められていなくてもかび毒が検出される例がある等、植物体内でのフモニシンの分布や実態に関して不明な点が多い。
飼料用トウモロコシのかび毒汚染リスクの最小化を図るため、フモニシン汚染部位の詳細を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 飼料用トウモロコシ(品種A、B、C、D)を栽培すると、程度の差はあるが一部に赤かび病が自然発生することがある。
- 赤かび病が発生した穂から、外見上病徴が特に顕著な3本を品種毎に選抜・サンプリングし、包葉を取り除くと、穂の内部は特に上部に傷みが認められる(図1)。
- さらに穂を上部と内部に分け、包葉と併せて3部位(上部、下部、包葉)を、乾燥後にフモニシン濃度(B1+B2)を分析すると、上部の平均値は、品種A:17,000μg/kg乾物、品種B:19,000μg/kg乾物、品種C:25,000μg/kg乾物、品種D:20,000μg/kg乾物である(図1)。一方、下部の平均値は、品種A:170μg/kg乾物、品種B:630μg/kg乾物、品種C:230μg/kg乾物、品種D:80μg/kg乾物で、包葉は、品種A:730μg/kg乾物、品種B:240μg/kg乾物、品種C:660μg/kg乾物、品種D:240μg/kg乾物である(図2:2012年栽培データ)。
- トウモロコシの赤かび病の病徴のある穂では、フモニシン濃度が非常に高い箇所と、比較的濃度の低い箇所がある。この特徴はいずれの品種であっても同様である。フモニシンはトウモロコシの穂の中で均一に分布しておらず、病徴部位に局在している。
成果の活用面・留意点
- 国内において、食品あるいは飼料中のフモニシン濃度の規制値(基準値)は定められていないが、コーデックス委員会は、食品としての未加工のとうもろこし穀粒中に、基準値4,000μg/kg(B1+B2)を設定している。
- 赤かび病の病徴の顕著な部位の除去することができれば、全体のフモニシン濃度の低減化が期待できる。
- トウモロコシの赤かび病は、害虫による食害との関係も報告されており、必ずしも上部の傷みが激しいとは限らない。
- トウモロコシの赤かび病の原因菌は複数知られており、菌種によっては、デオキシニバレノール等のフモニシン以外のかび毒を産生するものもある。個別のかび毒の分布等については今後の検証が必要である。
具体的データ
その他
- 中課題名:飼料等の家畜飼養環境の安全性確保技術の開発
- 中課題整理番号:170d1
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2000~2012 年度
- 研究担当者:上垣隆一、魚住順
- 発表論文等:Uegaki R. et al. (2014) Mycotox. Res. 31:51-56