2010年の口蹄疫国内発生での防疫作業中の怪我は消毒薬による熱傷が多い
要約
2010年の口蹄疫発生時の防疫作業中の怪我の発生状況を分析したところ、派遣された防疫作業員の9.6%が負傷している。また、最も多く報告された怪我は、消毒薬による化学熱傷であり、次いで、防護服や長靴による擦り傷や注射針による刺傷が多い。
- キーワード:口蹄疫、防疫作業、怪我、防疫作業員、消毒薬
- 担当:家畜疾病防除・動物疾病疫学
- 代表連絡先:電話 029-838-7708(情報広報課)
- 研究所名:動物衛生研究所・ウイルス・疫学研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
2010年の宮崎県で発生した口蹄疫では、終息までに、292戸で発生が確認され、約30万頭が殺処分されている。防疫作業への支援のため、全国から防疫作業員が動員され、こうして行われた防疫作業中には、大小様々な事故や怪我が報告されている。今後の安全かつ円滑な防疫作業の実施に資することを目的として、このような事故や怪我の原因や傾向を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 全国から派遣された防疫作業員の負傷状況に関するデータを分析することによって、防疫作業時に起こりやすい事故の種類、事故に伴う怪我の内容等を明らかにする。
- 防疫作業期間中に派遣された防疫作業員は、発生初期は獣医師のみの派遣であったが、殺処分待ち農場数の増加に伴い、獣医師以外の派遣も増加する。ワクチン接種家畜を含めた殺処分の終了後は、獣医師以外の防疫作業員が中心となって、清掃や消毒に従事している(図1)。
- 派遣された防疫作業員2,397人のうち230人(9.6%)が負傷している。1日当たりの平均負傷者数は3.5人であり、最も多かった日は14人が負傷している(図1)。
- 防疫作業中に最も多かった怪我の内容は、消毒薬(消石灰)による化学熱傷であり、次いで、防護服や長靴による擦り傷が多い(表1)。また、注射針よる刺傷は、獣医師に多く認められている。負傷部位については、脚を負傷することが多く、獣医師では、これに加えて眼や手を負傷している。
- 消毒薬による化学熱傷を防ぐ対策として、消石灰だけでなくクエン酸等の侵襲性の低い消毒薬の適宜活用や手足や眼の防護を工夫する等の対策が考えられる。また、防護服や長靴による擦り傷を防ぐ対策として、防護服の下に衣類を着用する等の改善を検討する必要がある。
成果の活用面・留意点
- 国や都道府県の家畜衛生担当者に今後の防疫作業時の安全対策のための有用な知見となる。
具体的データ

その他
- 中課題名:重要疾病の疫学解析及び監視技術の高度化等による動物疾病対策の確立
- 中課題整理番号:170d3
- 予算区分:その他外部資金(レギュラトリーサイエンス)
- 研究期間:2013~2014年度
- 研究担当者:室賀紀彦、山本健久、早山陽子、小林創太、肥田野新、筒井俊之
- 発表論文等:
1)Hayama Y. et al. (2014) J. Vet. Med. Sci.
2)ウイルス・疫学研究領域(2013)家畜衛生週報、339-342