抗原検出および血清型別可能な口蹄疫ウイルスのイムノクロマト法の開発

要約

口蹄疫ウイルスの抗原検出および血清型別を迅速に行えるイムノクロマト法は、臨床検体に対して高い検出率を示す。本法は従来のELISA法に比べて検査時間の大幅な短縮に貢献する。

  • キーワード:口蹄疫、抗原検出、血清型別、モノクローナル抗体、イムノクロマト法
  • 担当:家畜疾病防除・国際重要伝染病
  • 代表連絡先:電話 029-838-7708
  • 研究所名:動物衛生研究所・国際重要伝染病研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

口蹄疫ウイルスには互いにワクチンの効かない7つの血清型が存在するため、口蹄疫発生時に早期に血清型別を行うことは、ワクチンおよび血清型特異的に使用される各種検査キットの準備を整える上で重要である。また、従来用いているELISA法は判定までに5時間程度を要し、かつ診断を行う実験室内のウイルスによる汚染の原因ともなり得る。そこで、7つの血清型すべてに反応するモノクローナル抗体(MAb)および各血清型に特異的に反応するMAbを用いて、迅速かつ簡易に抗原の検出および血清型別が行えるイムノクロマト法の開発を試みる。

成果の内容・特徴

  • 7つ血清型すべてに反応するMAbおよびアジアで過去に流行したことのあるO、A、C、Asia1の各血清型に特異的に反応するMAbを用いて開発したイムノクロマト法によって、保有する口蹄疫ウイルス全16株の検出および上記4種の血清型別が可能である(図)。一方、これらのMAbは類似疾病を引き起こす豚水胞病ウイルスとは反応しない。
  • 口蹄疫陽性の臨床検体に対する検出率は、従来のポリクローナル抗体を用いた抗原検出ELISAが35.3%であるのに対し、本法では83.9%と高い。使用する検査材料別に比較すると水疱液が100%および水疱上皮が90.2%と高い検出率を示す(表)。

成果の活用面・留意点

  • 反応ステップが多く手技が煩雑であるELISA法に代わり、ワンステップで結果の得られる本法を用いることにより、実験室内においてバイオセーフティーの面で問題となるウイルスによる汚染および診断の際に問題となるクロスコンタミネーション(交叉汚染)のリスクを低減でき、迅速な抗原検出および血清型別が可能となる。
  • 民間企業と共同で更なる高感度化および製品化に取り組んでいる。
  • 本法は、発展途上国のような診断施設および社会的インフラ整備が充実していない国において口蹄疫の防疫に活用できる。

具体的データ

図1

その他

  • 中課題名:国際重要伝染病の監視技術の高度化と蔓延防止技術の開発・評価
  • 中課題整理番号:170a3
  • 予算区分:交付金、競争的資金(農食事業)
  • 研究期間:2009~2015年度
  • 研究担当者:森岡一樹、深井克彦、北野理恵、吉田和生、山添麗子、山田学、西達也、菅野徹
  • 発表論文等:Morioka K et al. (2015) PLoS ONE 10(8): e0134931. doi:10.1371/journal.pone.0134931