作付体系と不耕起によるアーバスキュラー菌根菌のトウモロコシへの感染向上
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要約
アーバスキュラー菌根菌の胞子密度は耕起法の影響を受けないが不耕起ではロータリ耕に比べ同菌感染率が高まる傾向にある。特に非宿主の夏作物(ソバ)を栽培して胞子密度の低下した跡においても冬作として3~4月まで宿主作物(エンバク)を導入後にトウモロコシの不耕起栽培を行うことで感染率が向上し、初期生育が促進される。
- キーワード:不耕起栽培、アーバスキュラー菌根菌、トウモロコシ
- 担当:中央農研・耕地環境部・作付体系研究室
- 連絡先:0298-38-8532
- 区分:作物・夏畑作物
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
アーバスキュラー菌根菌(以下AM菌とする)は、作物の根に共生して作物の養水分吸収を促進するとされている。AM菌の機能を活用して畑作物の生育の向上をはかるため、不耕起栽培および冬作の導入がAM菌感染ならびにトウモロコシの生育に及ぼす影響を明らかにする。
成果の内容・特徴
- AM菌胞子密度に対する耕起法の影響は認められない。トウモロコシの生育初期におけるAM菌感染率はロータリ耕に比べ不耕起で向上するが、生育ステージが進むとロータリ耕との差は縮小する。また、トウモロコシの初期生育は不耕起によって促進される傾向にあり、特に連年不耕起でより顕著になる (表1)。
- 後作トウモロコシの生育初期におけるAM菌感染率は前年の夏作物の種類が最も影響を及ぼし、非宿主作物(ソバ)の跡に比べ宿主作物(トウモロコシ)の跡で高い。また、感染率は冬作にAM菌宿主作物(エンバク)を導入した跡を不耕起にすると非宿主作物(キカラシ)を導入した跡もしくは休閑とした跡に比べ有意に高まる (図1)。
- 前年夏作にAM菌非宿主作物(ソバ)を栽培して胞子密度が低下した跡においても宿主作物(エンバク)を3~4月まで導入することで後作トウモロコシへの同菌感染率が高まり、その初期生育が促進される。特にその効果は不耕起栽培でより明確になる(表2)。
成果の活用面・留意点
- AM菌を活用した作付体系策定の判断材料となる。
- 関東地域の黒ボク土の結果であり、他の気象条件や土壌条件では検討を要する。
具体的データ



その他
- 研究課題名:畑作物の前後作適性に関わる要因の解明
- 予算区分:交付金
- 研究期間:1997~2001年度
- 研究担当者:臼木一英、山本泰由、田澤純子
- 発表論文等:1)Usuki et al. (2000) 3rd Int. Crop Sci. Cong. 2000 Abst.:168.
2)臼木ら (2000) 日作紀69(別2:60-61.
3)Usuki et al. (2001) Proc. 6th Symp. Int. Soc. Root Res.:390-391.