倒伏に強くオオムギ縞萎縮病抵抗性の大麦新品種「さやかぜ」
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要約
大麦新品種「さやかぜ」は、オオムギ縞萎縮病I・II・III型に抵抗性を有する、渦性の六条皮麦である。短強稈で、耐倒伏性に優れ、多収の中生種である。麦茶用、精麦(押麦)用に適する。群馬県で奨励品種(認定)に採用。
- キーワード:オオムギ、縞萎縮病抵抗性、短強稈、耐倒伏性、麦茶適性、新品種
- 担当:作物研・麦類研究部・大麦育種研究室
- 連絡先:029-838-8862、電子メールtoji@affrc.go.jp
- 区分:作物・冬作物、関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物(冬作物)
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
六条大麦は、関東東海地域では主に「カシマムギ」「すずかぜ」(主に麦茶用)、「シュンライ」(主に精麦用)が作付けされ
ている。「カシマムギ」は、成熟期に中折れ・倒伏し易く、収量性が劣り、「すずかぜ」は整粒歩合が劣るという欠点がある。また、いずれの品種もオオムギ縞
萎縮病に弱いか、十分な抵抗性を持たない。そのため、精麦及び麦茶適性を有し、オオムギ縞萎縮病I・II・III型に抵抗性で、耐倒伏性に優れた多収品種
の育成が望まれている。
成果の内容・特徴
- 「さやかぜ」は、1986年度に、多収性、良質性およびオオムギ縞萎縮病抵抗性を育種目標にして、「関東皮70号」/「関東
皮68号(後の「すずかぜ」)」の人工交配を行い、系統育種法により選抜・固定を図り育成した品種である。2003年度の世代は、雑種第17代(F17)
である。
- 「さやかぜ」は渦性の皮麦で、次のような特徴がある(表1)。
1)秋播性程度はIで、茎立性が中程度の中生種である。
2)「カシマムギ」に比べて、出穂期・成熟期ともに4日程度遅い。
3)短強稈で耐倒伏性に優れ、「カシマムギ」に比べて多収である。
4)オオムギ縞萎縮病のI・II・III型に対し抵抗性である。
5)赤かび病にはやや弱である。
6)整粒歩合が「すずかぜ」に比べて優れる。
7)押麦用としての精麦品質が優れる。
8)麦茶加工適性・麦茶品質とも、「カシマムギ」や「すずかぜ」と同程度であり、麦茶適性がある。
成果の活用面・留意点
- 温暖地東部の平坦地を中心とした地帯に適する。
- 赤かび病に強くないので、防除基準に従い適期防除を徹底する。
- 凍上害に弱いので、特に軽しょう土壌では踏圧を励行する。
- 耐湿性は中程度なので、排水不良田では排水対策を行う。
具体的データ
その他
- 研究課題名:縞萎縮病抵抗性等を備えた食用及び麦茶用大麦品種の育成 他
- 課題ID:08-03-02-01-01-03、08-03-02-01-09-03
- 予算区分:交付金、ブラニチ1系
- 研究期間:1986~2003年度
- 研究担当者:吉岡藤治、塔野岡卓司、河田尚之、吉田めぐみ、谷尾昌彦、松井勝弘、古庄雅彦、牧野徳彦、福岡忠彦、宮川三郎
- 発表論文等:命名登録(皮麦農林37号)及び品種登録申請(2003年12月15日)