サツマイモの食物繊維含量向上による機能性強化は育種的に可能である

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要約

サツマイモ塊根に含まれる食物繊維は、ビフィズス菌類を活性化する機能を有し、その食物繊維含量には明確な品種間差異が認められ、広義の遺伝率は比較的高 い。また、水溶性食物繊維含量と収量との関連は認められず、収量性を損なうことになしに、食物繊維含量の高いサツマイモを選抜育種することが可能である。

  • キーワード:サツマイモ、食物繊維、機能性、ビフィズス菌類、遺伝率
  • 担当:農研機構・作物研・畑作物研究部・甘しょ育種研究室
  • 連絡先:電話 029-838-8500、電子メール mnakatan@affrc.go.jp
  • 区分:作物・夏畑作物、関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物、関東東海北陸農業・流通加工
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

サツマイモは元来、食物繊維に富む食物である。近年、食物繊維の持つ機能性に関する研究が進み、人の生理機能、老化、発ガ ン、免疫などに関係する腸内代謝にも影響を与えることが明らかにされつつある。そこで、サツマイモの機能性の強化によってその消費拡大に寄与することを目 的として、サツマイモ塊根に含まれる食物繊維が腸内の善玉菌とされるビフィズス菌を活性化する機能性を有するかを確認するとともに、その含量を育種的に強 化することが可能かどうかを明らかにする。

成果の内容・特徴

  • サツマイモ塊根の凍結乾燥物から可溶性糖類等を完全に除去し、さらに、ヒトの炭水化物消化系をシミュレートした酵素処理によ り、デンプン等可消化性炭水化物を除去した食物繊維(非消化性)の水溶性分画は、ビフィズス菌Bifidobacterium bifidum, B.breve, B.adolesentis, B.infatis, B.longumを活性化する。一方、腸内の悪玉菌とされるClostridiumは活性化しない(表1)。 このことは、サツマイモの水溶性食物繊維が、腸内代謝の改善に寄与出来ることを示唆している。また、236品種・系統の塊根の不溶性並びに水溶性食物繊維 含量とB.bifidumを活性化する程度との間には、有意な相関が認められた(r=0.292**,0.275**)。
  • 31品種・系統を4年間栽培した結果、塊根乾物当たりの不溶性並びに水溶性食物繊維含量には品種間差があり、年次間差もあるが、それぞれの遺伝率(広義)は0.55、0.75と比較的高く(表2)、育種操作による食物繊維含量の向上は可能である。また、水溶性食物繊維含量は、塊根収量とは相関が認められず(表2)、収量性には影響を及ぼさずに、水溶性食物繊維含量を向上できる。
  • 塊根の食物繊維含量は、近赤外分光分析により迅速に推定が可能であり、1036品種・系統について食物繊維含量を推定したところ、不溶性食物繊維含量は1.2%~9.4%、水溶性は1.3%~7.2%である(図1)。食物繊維含量が高い育種素材として、Georgia jetなどが利用できる。

成果の活用面・留意点

  • サツマイモ育種事業の中で活用し、高機能性品種開発に資する。但し、不溶性食物繊維が食味に及ぼす影響は不明である。
  • サツマイモ食物繊維のビフィズス菌類活性化作用については、消費拡大のための基礎知見として活用する。

具体的データ

表1サツマイモ精製食物繊維分画のビフィズス菌等に対する増殖効果(千系3-629)

 

表2サツマイモ31品種系統の食物繊維含量と収量との相関および繊維含量の広義の遺伝率(4カ年)

 

図1 遺伝資源1036品種・系統の不溶性(左)および水溶性(右)食物繊維含量の分布

 

その他

  • 研究課題名:機能性食物繊維を強化したサツマイモの開発、甘しょの食物繊維及びビタミン含量の遺伝的強化
  • 課題ID:08-02-02-01-03-03
  • 予算区分:ジーンバンク(品質評価)、交付金
  • 研究期間:2003年度(2001~2003年度、1991~2000年度)
  • 研究担当者:田宮誠司、藏之内利和、片山健二、小巻克己、中谷 誠
  • 発表論文等:田宮ら(1999)、育種学研究1:143-147.