水稲品種コシヒカリの極早生同質遺伝子系統新品種「コシヒカリ関東HD1号」
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要約
水稲品種「コシヒカリ関東HD1号」は、戻し交配とDNAマーカー選抜により、コシヒカリの遺伝的背景にインド型品種Kasalath由来の出穂性QTL「qDTH6」(Hd1)をコシヒカリの遺伝的背景に導入した極早生同質遺伝子系統である。
- キーワード:イネ、コシヒカリ、同質遺伝子系統、出穂、早生、早期栽培、DNAマーカー
- 担当:作物研・稲研究部・稲育種研究室、多用途稲育種研究室
- 連絡先:電話029-838-8950、電子メールnics-seika@naro.affrc.go.jp
- 区分:作物・稲
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
水稲品種「コシヒカリ」は市場評価が高く、作付面積比率は現在でも増加している。そのため、極早生~晩生の出穂性を示すコシヒカリ
同質遺伝子系統群を育成し、「コシヒカリ」の栽培適地拡大や大規模経営での適期収穫を可能とすることを目的とした。一連の系統群の中で、本品種は極早生性
の同質遺伝子系統である。
成果の内容・特徴
- 「コシヒカリ関東HD1号」は、インド型品種「Kasalath」を一回親とし「コシヒカリ」を反復親として3回戻し交配し、DNAマーカー選抜により育成された同質遺伝子系統である。
- 「Kasalath」由来の出穂性QTLの一つqDTH6を含む約3cM(約560kbp)の導入染色体断片を有し、それ以外の99.9%の染色体領域は「コシヒカリ」に置換されている(図1)。
- 出穂期は、育成地の早植栽培では「あきたこまち」より3日、「コシヒカリ」より12日早い極早生、高知県、宮崎県の早期栽培では“早生の中”である。
- 育成地での稈長は「コシヒカリ」より15cm短く「あきたこまち」よりやや短い“中∼短”である。穂長は「コシヒカリ」よりやや短く、穂数は「コシヒカリ」よりやや多く、草型は“偏穂数型”である。
- いもち病真性抵抗性遺伝子型は“+”であり、葉いもちおよび穂いもち圃場抵抗性は“弱”である。白葉枯病抵抗性は“中”である。耐倒伏性は「コシヒカリ」よりやや優る“やや弱”で、穂発芽性は“やや難”である。耐冷性は「コシヒカリ」より劣り“中”である。
- 収量性は、育成地では「コシヒカリ」よりやや低く「あきたこまち」並である。
- 玄米の外観品質は、コシヒカリ並の“中中”であり、高温登熟性はコシヒカリ並の“やや強”である。
- 千粒重は、育成地では「コシヒカリ」並である。
- 炊飯米の食味は、育成地では「コシヒカリ」よりやや劣り「あきたこまち」並、高知県、宮崎県では「コシヒカリ」並である。
成果の活用面・留意点
- 適地は温暖地西部・暖地の早期栽培地帯である。障害型耐冷性が不十分なので、冷害が懸念される地域での栽培は避ける。
- 耐倒伏性が不十分なので、良食味米生産のためにも多肥にならないよう注意する。
- いもち抵抗性が不十分なので、発生に注意し適期に防除する。
具体的データ


その他
- 研究課題名:DNAマーカーを用いたイネ出穂性同質遺伝子系統の作出と評価
- 課題ID:08-01-01-01-13-05
- 予算区分:DNAマーカー/ゲノム育種
- 研究期間:2000∼2005年度
- 研究担当者:安東郁男、竹内善信、加藤 浩、井辺時雄、根本 博、太田久稔、佐藤宏之、平山正賢、平林秀介、出田 収、坂井真、青木法明、矢野昌裕(生物研)、田口文緒(生物研)、山本敏央(生物研)、蛯谷武志(富山農技セ)