ジスルフィド結合を有するアレルゲン蛋白質の実用的な解析技術と活用
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要約
二重カラムを用いた簡便な装置により、繊維等の固体に吸着したアレルゲンを迅速・簡便に定量することができる。また、ジスルフィド
を形成していたSH基を選択的に蛍光標識することで、アレルゲン蛋白質の構造的な特徴のひとつであるジスルフィドをもつ蛋白質を検出することができる。こ
れら解析技術はアレルゲン低減化素材の開発・評価に活用できる。
- キーワード:アレルゲン、ジスルフィド、フタロシアニン、繊維
- 担当:作物研・稲研究部・米品質制御研究室
- 連絡先:電話029-838-8951、電子メールhyano@affrc.go.jp
- 区分:作物・生物工学
- 分類:科学・普及
背景・ねらい
食物アレルゲンに由来するアトピー性皮膚炎や花粉症等、アレルギー性疾患は社会問題化しつつある。アレルゲンの低減化は重要な研究
課題であり、それにはアレルゲン蛋白質の実用的な検出技術が不可欠である。本研究ではアレルゲン蛋白質の迅速・簡便な検出技術を開発するとともに、これら
技術を低アレルゲン化素材の開発・評価等、アレルゲンの低減化研究に活用する。
成果の内容・特徴
- ジスルフィド結合は蛋白質のアレルゲン性に関与することが明らかになりつつある。蛋白質ジスルフィド結合を選択的に蛍光標識し(図1)、電気泳動を行った後に紫外線ランプ上で観察することで、アレルゲン性への関与が疑われる蛋白質ジスルフィド結合の有無を検出することができる。
- 上記技術を穀物、ハウスダスト、花粉等の抽出物に応用すると、既知のアレルゲンやそれらにアミノ酸配列相同性を有する蛋白質を検出できる。
- 二重カラムを用いた簡易分析法(図2)
により、繊維等の支持体に吸着したアレルゲンを定量できる。即ち、上部カラムに吸着支持体を入れ、アレルゲン溶液を注ぐ。遠心後、下部カラムから溶液を回
収し、SDS電気泳動を行う。電気泳動後のバンドをデンシトメータにより定量することで、支持体によるアレルゲン吸着量を定量できる。
- 両技術を活用し、フタロシアニン染色繊維が代表的な既知アレルゲンを吸着すること(図3)、および蛋白質の構造(大きさや、S-S結合の架橋状態)には影響を与えないこと(図4)を明らかにした。
- 以上のように、本解析技術は実用的なアレルゲン吸着素材の開発・評価に活用できる。
成果の活用面・留意点
- 本解析技術は未知のアレルゲン候補蛋白質の検出と除去にも応用できる。
- フタロシアニン染色繊維はアレルゲン吸着量が100gの繊維当たり2gと多く、吸着したアレルゲンが界面活性剤存在下で容易にはずれることから、洗濯により繰り返し使える等、アレルゲン吸着素材として幅広い利用を可能とする。
具体的データ




その他
- 研究課題名:包括的な低アレルゲン化技術の開発
- 課題ID:08-01-02-01-13-05
- 予算区分:アグリバイオ
- 研究期間:2002∼2005年度
- 研究担当者:矢野 裕之、黒田 秧、檜垣
誠吾(大和紡績株式会社)
- 発表論文等:Yano and Kuroda (2003) Cerea1 Chem. 80: 172∼174.