米の食味に関わるアルカリ崩壊性を判定するSNPsマーカー
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要約
米の食味に関与する米粒のアルカリ崩壊性、アミロペクチン鎖長分布、デンプン糊化温度は、デンプン合成酵素IIa遺伝子(SSIIa)に生じた2つの自然変異によって制御されている。これら2つの変異点に基づいたSNPs(1塩基多型)マーカーは、上記デンプン特性の品種間差を判定しうる。
- キーワード:アルカリ崩壊性、イネ、alk、米、食味、SNPsマーカー、デンプン合成酵素IIa遺伝子
- 担当:作物研究所・稲研究部・稲栽培生理研究室
- 連絡先:電話029-838-8952、電子メールnics-seika@naro.affrc.go.jp
- 区分:作物・稲、関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
米のアルカリ崩壊性は食味に関連するため、品種育成時に選抜指標のひとつとして用いられる。同特性の品種間差は第6染色体の主働遺
伝子alk(デンプン合成酵素IIa、SSIIa)によって制御されるが、他の微働遺伝子や登熟期の気温によっても左右されるため、表現型によるalk遺
伝子型の判定は必ずしも容易でない。そこでSSIIaに生じた原因候補変異点を明らかにし、同変異点に基づいた選抜用DNAマーカーを開発することで、
alk遺伝子型の正確な判定を可能とする。
成果の内容・特徴
- 複数品種のSSIIa塩基配列の比較から、アミノ酸置換を伴うSNPsが4つ確認される。それらの遺伝子型の組み合わせ(ハプロタイプ)とデンプン特性(アミロペクチン短鎖比率、アルカリ崩壊性、糊化開始温度)との相関解析の結果から、SNP3とSNP4各々がデンプン特性に影響を及ぼす原因候補変異点と判断される(図1)。
- 5つのプライマー、SNP3(G)フォワードプライマー、SNP3(A)フォワードプライマー、SNP4(C)フォワードプライマー、SNP4(T)フォワードプライマー、SNP3,4共通リバースプライマーによって原因候補変異点の遺伝子型が判定できる(図2)。
- 本SNPsマーカーを用いると、アミロペクチン短鎖比率が高く、アルカリ崩壊性が易で糊化開始温度の低い品種・系統は、SNP3がAもしくはSNP4がTと判定される(図3)。
- 生物研ジーンバンク分譲の、世界および日本イネコアコレクションのアミロペクチン短鎖比率の高低は、本SNPsマーカーによるSSIIaの遺伝子型と明確に対応し、その有効性が検証されている(データ略)。
成果の活用面・留意点
- 米の食味と関連する、第6染色体のalk座で制御されるアルカリ崩壊性のDNAマーカー選抜に利用可能である。
- SNP3の遺伝子型判定には、SNP3(G)もしくはSNP3(A)フォワードプライマーとSNP3,4共通リバースプライマーを混合して各々PCRを行う。また、SNP4の遺伝子型判定は、SNP4(C)とSNP4(T)フォワードプライマーおよびSNP3,4共通リバースプライマーを混合して一度にPCRを行うことが可能である。
- 他の変異によってアルカリ崩壊性が変更した系統・個体の選抜には使用できない。
具体的データ



その他
- 研究課題名:食味形質の評価ならびに食味候補遺伝子のマーカー化
- 課題ID:08-01-04-01-07-05
- 予算区分:DNAマーカー
- 研究期間:2004∼2005年度
- 研究担当者:梅本貴之、青木法明、近藤始彦
- 発表論文等:Umemoto and Aoki (2005) Funct. Plant Biol. 32: 763-768.