製パン適性をもつ温暖地向け硬質小麦新品種「ユメシホウ」

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要約

小麦「ユメシホウ」は温暖地の平坦地に適したパン用硬質小麦品種である。高分子量グルテニンサブユニット5+10をもち、製パン適性がある。

  • キーワード:コムギ、硬質、パン用
  • 担当:作物研・めん用小麦研究チーム、パン用小麦研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-7497
  • 区分:作物、関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

関東地域で生産される小麦のほとんどは軟質のめん用であり、パン用には不向きである。しかしながら地元産小麦を使ったパンに対す る消費者の要望は多い。特に茨城県つくば市は「パンの街つくば」プロジェクトにおいて、「地産地消のおいしいパン作り」の活動を産学官連携で進めており、 地元に適したパン用小麦品種を強く求めている。そこで製パン適性をもち温暖地に適した硬質小麦品種を育成する。

成果の内容・特徴

小麦「ユメシホウ」は1997年度に、温暖地向けパン用品種を育種目標として、白粒で硬質の「関系W421」(後のタマイズミ)を母、赤粒で硬質且つ高分 子量グルテニンサブユニット5+10をもつ「谷系RA4965」を父として人工交配を行い、以後、半数体育種法により選抜・固定を図ってきたものである。 2006年度における世代は倍加半数体世代第8代(DH8)である。

「農林61号」と比較して次のような特徴がある。(表1)

  • 播性程度はI~IIで、出穂期、成熟期が共に3日程度早い。
  • 褐ぷで稈長は短く、穂長はやや短く、穂数は少ない。耐倒伏性はやや優れる。
  • 収量性は同程度かやや高く、容積重は同程度かやや大きく、千粒重は同程度かやや小さい。
  • 穂発芽耐性は劣り、赤さび病、縞萎縮病にはやや強く、赤かび病、うどんこ病には弱い。
  • 硬質で製粉歩留が高く、60%粉の色はやや劣る。
  • ファリノグラムの吸水率は高く、バロリメーターバリュウはやや高い。
  • 高分子量グルテニンサブユニット5+10をもち、製パン適性がある。パンの官能評価の合計点は「ニシノカオリ」(61.1点)より高い。

成果の活用面・留意点

  • 温暖地の平坦地に適するパン用小麦である。
  • 茨城県つくば市等で地産地消のパン作りのための需要があり、普及が見込まれる。
  • パン用であるので、蛋白質含量が低くならないように肥培管理に努める。
  • 穂発芽性は“中”であるので、適期収穫に努める。
  • うどんこ病抵抗性および赤かび病抵抗性は“弱”であるので、防除を徹底する。

具体的データ

表1 ユメシホウの特性一覧

 

表2 ユメシホウの製パン試験成績

 

その他

  • 研究課題名:実需者ニーズに対応したパン・中華めん用等小麦品種の育成と加工・利用技術の開発
  • 課題ID:311-c
  • 予算区分:交付金(基盤研究費、新需要麦、重点事項研究強化費)、委託プロ(ブラニチI系)
  • 研究期間:1997~2007年度
  • 研究担当者:乙部千雅子、関昌子、松中仁、藤田雅也、吉岡藤治、柳沢貴司、吉田久、田引正、谷尾昌彦、伊藤美環子、西尾善太