加工処理による穀物のアレルゲンを含む蛋白質の除去技術
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要約
穀物粉に加水、加熱して糊化させ、アミラーゼ処理して得られた糖化液に含まれる蛋白質は、低速・短時間の遠心だけで白濁物として沈殿し、除去できる。上清には蛋白質・アレルゲンが含まれず、ブドウ糖、麦芽糖などに富んだ栄養成分が回収される。
- キーワード:穀物、アレルゲン、蛋白質、糊化、アミラーゼ、糖化液、食品加工
- 担当:作物研・米品質研究チーム
- 連絡先:電話029-838-8951
- 区分:作物
- 分類:研究・普及
背景・ねらい
穀粒および穀物由来の食品に含まれるアレルゲンは、アレルギー患者にアトピー性皮膚炎やアナフィラキシー等の重篤な症状を引き起
こすことがある。また、腎臓病患者の栄養補給剤として蛋白質が低減した食品の開発が求められている。食品素材として用いられる米、小麦、大豆等の主要な穀
物の低アレルゲン・低蛋白化は重要な研究課題であり、簡便で安全な実用技術の開発が求められている。アレルゲンには多くの蛋白質が原因となっているため、
育種による蛋白質の低減化にも限界がある。そこで、加工処理により穀物に含まれる蛋白質のほとんどを一度に低減するための効果的な技術を開発する。
成果の内容・特徴
- 穀粒またはその粉末に加水して糊化温度以上に加熱すると、ほとんどの蛋白質が不溶性成分に吸着する。
- 糊化後にホモジナイザーで撹拌下、アミラーゼを添加して糖化させると、アレルゲンを含む蛋白質は不溶性成分に吸着したまま糖化液中を白濁物として浮遊する。糖化液を遠心すると、白濁物は沈殿する(図1)。上清には、アレルゲンをほとんど含まず、ブドウ糖、麦芽糖などの栄養成分に富んだ溶液が回収される(図2)。
- 糊化物に対して、アミラーゼとプロテアーゼを同時に処理して遠心することにより、アレルゲン・蛋白質フリーの糖類・アミノ酸に富んだ液(上清)を製造することができる。
成果の活用面・留意点
- 本成果は米、小麦、そば、大豆等の穀物に広く応用できる。
- 100G、10分程度の低速・短時間の遠心処理ですべての蛋白質を十分に除去した上清画分を得ることができる。特別な機器・溶媒を必要とせず、低コストで安全かつ簡便に穀物中のアレルゲン・蛋白質を除去できる新しい加工処理技術である。
- 低アレルゲン・低蛋白質食品素材の製造技術の一つとして食品加工分野において広範な利用が期待できる。
- アレルギー患者・腎臓病患者をはじめ乳幼児、高齢者の栄養補給飲料の製造等、医薬分野への応用が期待できる。特に米を原料とした糖化液に
は、抗ピロリ菌作用が報告されている(既報:平成18年度産学官連携による食料産業等活性化のための新技術開発事業(農林水産省事業))ことから、アレル
ゲンを含まない機能性食品素材の開発への応用も期待できる。
具体的データ


その他
- 研究課題名:包括的なアレルゲン検出技術を利用した低アレルゲン化技術の実用化・産業化のための研究開発
- 課題ID:221-d
- 予算区分:アグリバイオ
- 研究期間:2004~2007年度
- 研究担当者:矢野裕之、黒田秧、竹内正彦(長野農工研)、西澤賢一(長野農工研)、岡澤由晃(長野興農)、田口計哉(長野興農)