日本陸稲由来の2つの縞葉枯病抵抗性遺伝子は異なる作用を持つ
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要約
日本陸稲由来イネ縞葉枯病抵抗性は2つの遺伝子Stva
とStvb
が関与する。これらの遺伝子は縞葉枯病に対する作用が異なっており、Stvb
は感染株率を低減し、Stva
は病徴の抑制効果を持つ。これら2遺伝子の相補作用により高度抵抗性となる。
- キーワード:水稲、イネ縞葉枯病、抵抗性、準同質遺伝子系統
- 担当:低コスト稲育種研究チーム、作物研・稲マーカー育種研究チーム、近中四農研・低コスト稲育種研究近中四サブチーム
- 連絡先:電話029-838-8536
- 区分:作物、関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
日本陸稲由来の縞葉枯病抵抗性はStva
、Stvb
の2遺伝子が関与している。これらの抵抗性遺伝子は、第2および第11染色体に座乗していることが報告されているが、それぞれの遺伝子の作用は明らかにされていない。そのため、縞葉枯病抵抗性遺伝子に関する準同質遺伝子系統を作出し、抵抗性遺伝子の作用を解析する。
成果の内容・特徴
- 「中系IL1」、「中系IL9」は陸稲由来抵抗性遺伝子Stvb
、Stva
をそれぞれ導入した「コシヒカリ」準同質遺伝子系統である。また、「中系IL10」はこれらの交雑後代から作出された、両方の遺伝子を持つ準同質遺伝子系統である。
- 抵抗性遺伝子Stvb
は、感染株率を「コシヒカリ」よりも大幅に低下させる作用があるが、感染した個体は枯死するような重度の病徴を示す(表1)。縞葉枯病に対して「抵抗性(R)」と判定される強い作用を示す。
- 抵抗性遺伝子Stva
は、感染株率に対しては効果を示さないが、感染個体の病徴を軽微にする作用がある(表1)。縞葉枯病に対して「中程度抵抗性(M)」と判定される作用を示す。
- 両遺伝子を保有する「中系IL10」は、2遺伝子の相補作用により、日本陸稲と同等の高度抵抗性を示す(表1)。
成果の活用面・留意点
- 抵抗性遺伝子Stvb
は強い抵抗性を示し、単独での利用が可能となるが、抵抗性遺伝子Stvaの抵抗性は中程度であり、単独での効果は弱い。
- 「中系IL1」は「中国IL1号」、「中系IL10」は「中国IL2号」の地方番号で配布されている。種子の配布に関する問い合わせ先は、近中四農研・低コスト稲育種研究近中四サブチーム(電話 084-923-4100)である。
具体的データ

その他
- 研究課題名:稲病害虫抵抗性同質遺伝子系統群の選抜と有用QTL遺伝子集積のための選抜マーカーの開発
- 課題ID:211-g
- 予算区分:基盤、ゲノム育種
- 研究期間:2004-2006年度
- 研究担当者:前田英郎、春原嘉弘、飯田修一、出田 収、松下 景
- 発表論文等:Maeda, H. et al. (2006) Breed. Sci. , 56: 359-364.