発芽指数によるコムギ農林登録品種の種子休眠性の網羅的比較

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要約

コムギ農林登録品種(160品種)を中央農研・観音台圃場(つくば市)で栽培し、種子休眠性を発芽指数(GI)で網羅的に複数年比較することにより、異なる地域・年代に育成された国内のコムギ品種全体の中における各品種の種子休眠性程度が評価できる。

  • キーワード:コムギ、農林登録品種、発芽指数、種子休眠性
  • 担当:作物研・麦類遺伝子技術研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-8861
  • 区分:作物
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

収穫期が梅雨にあたる日本のコムギ品種にとって、穂発芽耐性の向上は重要な育種目標である。しかし、新品種の穂発芽耐性は少数の 標準品種との比較により評価されているため、これまでに日本で育成されてきた品種との網羅的な比較は行われていない。そこで、北海道から九州に至る地域で 育成され、日本各地で栽培されてきたコムギ農林登録品種について、中央農研・観音台圃場(つくば市)で一同に栽培し、各品種の種子休眠性を網羅的に複数年 比較する。これにより、国内のコムギ品種全体の中での各品種の種子休眠性程度を評価する。

成果の内容・特徴

  • コムギ農林登録品種(160品種)を中央農研・観音台圃場(つくば市)で3カ年栽培し、採取した種子の休眠性をGI(式1)で比較すると、単一品種のGI値は年次により変動するが、各品種間の種子休眠性の序列は概ね一致し、種子休眠性を網羅的に比較できる(図1)。なお、GIでは、種子休眠性の強い品種をより詳細に比較することができる。
  • 近年[1989年(平成元年)以降]育成された日本めん(うどん)用品種は、それまでに育成された品種に比べて低いGI値を示す品種が多く、種子休眠性が向上している(図1)。
  • パン用品種「ニシノカオリ」や「キタノカオリ」、「ミナミノカオリ」は、3カ年共に高いGI値を示し、種子休眠性が弱い(図1)。
  • 地域別に見ると、関東以西で育成された品種には、他の地域と比較して低いGI値を示す種子休眠性の強い品種が多い(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 異なる地域・年代に育成されたコムギ農林登録品種間の種子休眠性の序列が明らかになることで、各育成地間におけるコムギ品種の種子休眠性の比較が容易になり、穂発芽耐性品種の選定に役立つ。
  • コムギ農林登録品種のGI値は、作物研究所のWebサーバー(http://nics.naro.affrc.go.jp/mugi/homepage/GerminationIndex.html)で公開する。
  • 熟期の違いや後熟による休眠覚醒を考慮していない発芽試験の結果である。
  • 適地栽培で採取した種子を用いた発芽試験ではないため、各育成地で行った発芽試験の傾向とは必ずしも一致しない可能性がある。

具体的データ

式1.発芽指数(GI)の計算式

 

図1. GI値分布の年次間比較

 

図2.地域別のGI値の分布(2007年産)

 

その他

  • 研究課題名:麦類の穂発芽耐性等重要形質の改良のためのゲノム育種
  • 課題ID:221-a
  • 予算区分:交付金プロ(実用遺伝子)
  • 研究期間:2005~2007年度
  • 研究担当者:蝶野真喜子、松中仁、関昌子、藤田雅也、久保堅司、田谷省三、渡邊好昭