ダイズプロテオームデータベースは湿害関連タンパク質の検出に有用である

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

ダイズの生育時期・器官特異的・細胞内小器官タンパク質を解析し、二次元電気泳動を基盤にしたダイズプロテオームデータベースを構築し公開する。湿害時に増加・減少するタンパク質情報も収録されている。

  • キーワード:ダイズ、プロテオーム、データベース、湿害
  • 担当:作物研・大豆生理研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8693
  • 区分:作物
  • 分類:研究・普及

背景・ねらい

ダイズは、消費量が穀類に次いで4番目であり、油糧用・バイオ燃料用としても重要な作物である。本研究では、機能解明研究に広く利用可能なダイズプロテオームデータベースを構築・公開し、ダイズ遺伝子発現の包括的な研究の促進に資する。また、わが国の水田転換畑におけるダイズの栽培では、湿害が発生し生産が不安定となるので、耐湿性ダイズ品種の開発が重要な課題である。そこで、湿害に関連するタンパク質群の情報を提供し、湿害対策研究の促進と国産ダイズの安定的な生産のための基盤情報を提供する。

成果の内容・特徴

  • ダイズのさまざまな生育時期の18種類の各種器官(種子、根、胚軸、葉等)あるいは3種類の精製細胞内小器官(細胞膜、細胞壁、葉緑体)(図1)から抽出したタンパク質を二次元電気泳動し、それぞれの二次元電気泳動像に基づいて各タンパク質スポットを精製し、気相プロテインシーケンサーあるいは質量分析計でアミノ酸配列を決定している。
  • 二次元電気泳動上で分離した7,292個のタンパク質スポットのうち、既に500種類について分子量・等電点・発現量等の情報、さらに相同検索結果情報等をカタログ化して、ダイズプロテオームデータベースに収録し(図2)、各々のタンパク質情報に対する検索機能も付加している。
  • 本データベース上でダイズ出芽期における湿害に関連するタンパク質群を検索すると、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ、アルコール脱水素酵素、新規タンパク質群等が検出される等、機能タンパク質の包括的な解析に有用である(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 湿害時に変動するタンパク質群を収録することにより、耐湿性タンパク質の検索が可能となる。
  • ダイズプロテオームデータベースは、「http://proteome.dc.affrc.go.jp/Soybean/」のサイトで公開し、定期的に更新している(図4)。
  • ダイズプロテオームデータベースに収録されているデータは、ダイズ品種エンレイを供試した時の結果である。
  • ダイズプロテオームデータベースは、ダイズの湿害発生機構に関与するタンパク質の検出のみならず、塩ストレスやオゾンストレス等に関与するタンパク質等、多くの重要形質に関与するタンパク質の探索にも大いに役立つツールになる。

具体的データ

図1.ダイズプロテオームデータベースに集積しているダイズの生育時期と器官(A)および細胞内小器官(B)

図2.ダイズプロテオームデータベースに収録している二次元電気泳動像の一例 二次元電気泳動像上の各タンパク質スポットから、分子量、等電点、発現量、相同検索結果等のタンパク質情報、および同じ情報を持つ他の部位のタンパク質にリンクしている。

図3.湿害関連タンパク質の検出の一例 冠水処理で変動するタンパク質群の発現を解析すると、#17のアルコール脱水素酵素が顕著に増加している。

図4.ダイズプロテオームデータベースのウエブサイト http://proteome.dc.affrc.go.jp/Soybean/

その他

  • 研究課題名:大豆の湿害耐性等重要形質の改良のための生理の解明
  • 課題ID:221-b
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:小松節子、中村卓司、中山則和、平賀勧、山本亮、島村聡、南條洋平、大柳一(三菱スペースソフト)、坂田克己(三菱スペースソフト)
  • 発表論文等:
                        1) 小松, 中村, 山本, 中山, 島村, 平賀 (2008) Soybean Proteome Database構築・公開.
                           http://proteome.dc.affrc.go.jp/Soybean/ 機構登録番号: 機構-C02.
                        2) Shi, Yamamoto, Shimamura, Hiraga, Nakayama, Nakamura, Yukawa, Hachinohe,
                           Matsumoto, Komatsu (2008) Cytosolic ascorbate peroxidase 2 is involved in
                           the soybean response to flooding. Phytochemistry, 69: 1295-1303.