モチ性裸麦「ダイシモチ」穀粒におけるアントシアニンの蓄積

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要約

ダイシモチ穀粒のアントシアニンはシアニジンマロニルグルコシドを主成分とし、果皮に局在する。開花後35日に最も多く蓄積する。

  • キーワード:ハダカムギ、アントシアニン、プロアントシアニジン、登熟、蓄積、糯性
  • 担当:作物研・大麦研究関東サブチーム、近中四農研・大麦・はだか麦研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8880
  • 区分:作物、近畿中国四国農業・作物生産
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

近年アントシアニンのもつ抗酸化性、抗炎症作用、血糖低下作用等の生理活性が明らかとなり、アントシアニン色素を含む穀物はその供給源として注目されている。在来のモチ性裸麦や栽培性を改善した品種「ダイシモチ」は登熟期に紫色に着色する特徴を有するが、その色素はあまり利用されていない。そこでダイシモチ穀粒に含まれるアントシアニン色素の有効活用を図るため、その主成分と登熟過程の蓄積を明らかにするとともに、搗精により穀粒における局在を調べる。

成果の内容・特徴

  • ダイシモチ穀粒(図1)にはアントシアニンが含まれている。主成分はマロニル基を2個含むシアニジン3-(3″,6″-ジマロニルグルコシド)であり、次いでマロニル基1個を含むシアニジン3-(6″-マロニルグルコシド)とシアニジン3-(3″-マロニルグルコシド)、マロニル基を持たないシアニジン3-グルコシドが含まれる(図2)。
  • ダイシモチ穀粒のアントシアニンは果皮に局在し、搗精歩留90%の搗精麦では全粒の約1/3しか残存せず、搗精歩留75%や60%ではほとんど残存しない(表1)。
  • ダイシモチ穀粒では、アントシアニンは開花後28日以降に蓄積し、開花後35日に最大になり、開花後42日には減少する。登熟期を通じてシアニジン3-(3″,6″-ジマロニルグルコシド)が最も多く含まれる。アントシアニンの蓄積時期は、加熱後の褐変の原因であり大麦穀粒の主要なポリフェノール成分であるカテキンやプロアントシアニジンの蓄積時期よりも遅い(表2)。

成果の活用面・留意点

  • ダイシモチの全粒及び糠はアントシアニンの供給源となり得る。
  • 大麦の全粒粉は菓子原料等に利用されているが、アントシアニンを多く摂取するためには全粒の利用が望ましい。
  • 収穫直前に降雨にあうとアントシアニンは著しく減少するため、適期収穫を心がける。

具体的データ

図1 成熟期のダイシモチの穂(左)と穀粒(右)図2 ダイシモチ穀粒アントシアニンのクロマトグラム(A)と化学構造(B)

表1 ダイシモチ穀粒の搗精歩留とアントシアニン含量

表2 登熟期のダイシモチ穀粒中のアントシアニン、カテキン及びプロアントシアニジンの含量

その他

  • 研究課題名:大麦・はだか麦の需要拡大のための用途別加工適性に優れた品種の育成と有用系統の開発
  • 課題ID:311-d
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:神山紀子、小野裕嗣(食総研)、柳澤貴司(近中四農研)
  • 発表論文等:Kohyama et al. (2008) J. Agric. Food Chem. 56(14):5770-5774