切断麦に適し極低ポリフェノールで炊飯後褐変が少ない六条皮麦新品種「はるしらね」

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

六条皮麦新品種「はるしらね」は、プロアントシアニジンフリー遺伝子ant28を有し、炊飯後の褐変が極めて少ない。砕粒率が低いため、切断麦用としても優れる。縞萎縮病抵抗性で、穂数が多く多収である。

  • キーワード:六条オオムギ、プロアントシアニジンフリー、ant28、低褐変、切断麦
  • 担当:作物研・大麦研究関東サブチーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8880
  • 区分:作物、関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作(冬作)
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

大麦は食物繊維β-グルカン等の機能性成分を豊富に含む穀物であるが、従来品種は穀粒にプロアントシアニジンなどのポリフェノール類を含み、炊飯などの加熱により褐変を生じ、これが大麦の消費拡大の妨げの一つとなっている。2008年度にはプロアントシアニジンフリーの二条大麦品種「とちのいぶき」「白妙二条」が育成され、大麦の消費拡大に貢献するものとして実需者から高い評価と期待を得ている。そこで、近年麦ごはん用として消費の多い切断麦への加工適性が優れる、六条種のプロアントシアニジンフリー品種を育成する。

成果の内容・特徴

「はるしらね」は、軟質・高白度で精麦品質が優れる「東山皮96号(後のファイバースノウ)」に、プロアントシアニジンフリー遺伝子(ant28)を有する「泉系A133-3」を交配したF1を母として、早生・短強稈・縞萎縮病抵抗性で精麦品質が優れる「東山皮101号(後のシルキースノウ)」を父として人工交配し、系統育種法により育成した六条皮麦で、以下の特徴がある(表1)。

  • プロアントシアニジンフリー遺伝子(ant28)を持つため、ポリフェノール含量が少なく(表2)、炊飯後の褐変程度がごく小さい(写真1)。
  • 搗精時間は短く、精麦白度が高い。砕粒率は少なく、精麦品質が総じて優れる。
  • 秋播性程度IVのやや早生種で、出穂期・成熟期は「カシマムギ」よりも3日程度遅い。
  • オオムギ縞萎縮病ウイルスI・II・III・IV型に極強である。
  • うどんこ病抵抗性は極強、赤かび病抵抗性はやや弱である。
  • 穂発芽性はやや易である。
  • 「シュンライ」並の長稈であるが、耐倒伏性はやや強である。
  • 穂長はやや長く、穂数が多く、多収である。
  • やや小粒であり、容積重が大きく、外観品質は「シュンライ」並である。

成果の活用面・留意点

  • 麦ごはん用として、押麦と切断麦適性があるという実需者の評価を受けている。
  • 麦ごはんのみならず、レトルト食品、大麦粉等の新しい付加価値を持つ食材原料として生産が期待される。
  • 穂発芽し易いので適期収穫を徹底する。

具体的データ

表1 「はるしらね」の特性一覧

表2 「はるしらね」のポリフェノール含量と搗精麦の加熱後色相

写真1 炊飯麦の保温 24 時間後の色相

その他

  • 研究課題名:大麦・はだか麦の需要拡大のための用途別加工適性に優れた品種の育成と有用系統の開発
  • 中課題整理番号:311-d
  • 予算区分:基盤、高度化事業
  • 研究期間:2001~2009年度
  • 研究担当者:吉岡藤治、塔野岡卓司、青木恵美子、河田尚之、吉田めぐみ
  • 発表論文等:品種登録出願 第24501号(2010年1月)