稲由来変異型アセト乳酸合成酵素遺伝子を利用した遺伝子組換え大豆の作出法
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要約
ピリミジニルカルボキシ系除草剤耐性稲から単離された同除草剤耐性遺伝子を選抜マーカー遺伝子としたパーティクルガンによる遺伝子組換え大豆の作出法である。
- キーワード:大豆、遺伝子組換え、選抜マーカー遺伝子、除草剤耐性
- 担当:作物研・大豆生理研究チーム、東北農研・大豆生理研究東北サブチーム
- 代表連絡先:電話029-838-8392
- 区分:作物
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
遺伝子組換え作物の実用化にあたって障壁となる微生物由来の選抜マーカー遺伝子に代わるものとして、ピリミジニルカルボキシ(pyrimidinyl carboxy, PC)系除草剤耐性稲由来の同除草剤耐性遺伝子(変異型アセト乳酸合成酵素遺伝子、Os-mALS遺伝子)が利用されている。本研究ではOs-mALS遺伝子を選抜マーカー遺伝子に用いてパーティクルガンによる遺伝子組換え大豆の作出法を開発する。
成果の内容・特徴
- Os-mALS遺伝子導入用ベクター(図1)をパーティクルガン法により大豆品種「Jack」の不定胚に導入する。PC系除草剤であるビスピリバックナトリウム塩(bispyribac-sodium, BS剤)による低濃度条件での選抜培養から遺伝子組換え大豆が作出される。中・高濃度条件での選抜培養からは遺伝子組換え大豆が作出されない(表1)。
- 従来のハイグロマイシン (Hygromycin, Hyg)とハイグロマイシンリン酸転移酵素遺伝子(hpt遺伝子)の組み合わせによる遺伝子組換え大豆不定胚の選抜では、Hyg耐性不定胚は鮮やかな緑色を呈して生存するが、hpt遺伝子が導入されていないHyg感受性不定胚は白化して死滅する(図2左)。一方、BS剤による選抜では、BS耐性不定胚は暗緑色を呈し、Os-mALS遺伝子が導入されていないBS感受性不定胚は褐色を呈する(図2右)。
- Os-mALS遺伝子導入T1大豆個体はサザンブロット解析によりゲノムDNAへの挿入が確認され、ノーザンブロット解析によりmRNAの転写が確認される(データ省略)。
- Os-mALS遺伝子導入T1大豆個体へのBS剤散布処理により除草剤耐性を示すことが確認される(図3)。
成果の活用面・留意点
- BS剤によるOs-mALS遺伝子導入不定胚の選抜培養では、BS耐性不定胚は暗緑色を呈し、褐色を呈する感受性不定胚と区別しにくいために、感受性不定胚を成熟・発根発芽処理に移さないよう注意が必要である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:大豆の湿害耐性等重要形質の改良のための生理の解明
- 中課題整理番号:221b
- 予算区分:交付金プロ(組換え植物、実用遺伝子)
- 研究期間:2006~2009年度
- 研究担当者:藤郷誠、酒井淳一、兼松誠司、日高繰、山岸紀子、高畑義人(岩手大)、古谷規行(京都府農資セ)、角康一郎(クミアイ化学)、清水力(クミアイ化学)
- 発表論文等:Tougou M. et al. (2009) Plant Cell Rep. 28:769-776