アミロース含有率が中程度の多収穫米は米粉パンに適し施肥の影響も受けない
要約
アミロース含有率が15-20%程度の多収穫米は一般食用米の米粉と同等の製パン適性を持つ。また、多肥栽培によりたん白質含有率が高くなっても、米粉パンの品質に大きな違いは生じない。
- キーワード:米、多収穫米、米粉パン、損傷でん粉、アミロース、たん白質
- 担当:作物研・米品質研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-8951
- 区分:作物、食品
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分類:技術・参考
背景・ねらい
近年、米粉の消費量は拡大しつつあるが、さらなる普及拡大のためには、より低コストで良質な米粉を生産することが必要である。多収穫米の利用はそのための一手段として考えられるが、これら品種・系統の製粉特性、加工適性についてはほとんど明らかになっていない。そこで、多収穫米から調整した米粉を用いて、グルテン入り米粉パンの製パン特性を評価する。
成果の内容・特徴
- タカナリなどの中程度のアミロース含有率を持つ多収穫米の米粉パンは、腰折れや膨らみ程度がコシヒカリなどの一般食用品種の米粉パンと同程度である(図1)。
- アミロース含有率が高い品種は、米粉パンの腰折れが少ないが、保存中にパンが硬くなりやすいため、米粉パンには適さない(図1、図2)。また、糊化温度が高い品種もパンが硬くなりやすいために適さない(図2)。そのため、アミロース含有率が15-20%で糊化温度が70°C以下の品種がパン用の米粉製造に適する(図1)。
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窒素施肥量を増やすとたん白質含有率は高まるが、米粉パンの硬さには明確な影響は見られない(図3)。このことから、多收を狙った多肥栽培を行っても高品質な米粉パンの作成が可能であることが示唆される。
成果の活用面・留意点
- 多収穫米を使用することにより生産コストが下がり、米粉の低コスト化へとつながる。
- 白濁の多い米は籾すり時や精米時に砕米となり、精米歩留まりを低下させやすい。
- たん白質含有率が高い米では、米粉パンの比容積がやや低い傾向があったことから、極端な多肥栽培で得られた米では米粉パンの膨らみが劣る可能性がある。
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本成果は、湿式の気流粉砕によって得られた米粉を用いた実験結果である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:イネゲノム解析に基づく品質形成生理の解明と育種素材の開発
- 課題ID: 221d.1
- 予算区分:委託プロ(加工プロ4系(稲))
- 研究期間:2006~2010年度
- 研究担当者:青木法明、濱田茂樹、鈴木保宏、佐藤徹(新潟農総研)
- 発表論文等:青木法明、他(2010)グルテン添加米粉パンにおける多収性稲品種の製パン特性、日本食品科学工学会誌57 (3)、107-113