イネ科作物の茎部成分変異と糖化効率の関係
要約
イネ科作物の茎部の非構造性炭水化物含有率と細胞壁成分には、作物及び品種間に大きな違いがある。またリグニン含有率の低いイネおよびソルガムbmr品種は、高いセルロース糖化効率を示す。
- キーワード:イネ科作物、デンプン、可溶性糖、細胞壁成分、セルロース糖化効率
- 担当:作物研究所・稲収量性研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-8952
- 区分:バイオマス
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
地球温暖化やエネルギーの安定供給の観点から、作物の茎部を利用したバイオエタノール生産が注目されている。エタノール生産効率を向上するためには、茎部成分の変異とリグノセルロース等細胞壁成分の糖化への影響を明らかにし、エタノール生産適性の高い品種を効率的に育成することが重要である。そこで、イネ、サトウキビ、ソルガム茎部について、糖化が容易な非構造性炭水化物 (NSC) の含有率および細胞壁成分に着目して、作物間または品種間の差異を明らかにする。さらに、これらが細胞壁セルロースの糖化効率に及ぼす影響を検討する。
成果の内容・特徴
- NSC含有率の平均値は、出穂期のイネ、糖収穫期のソルガム(2回刈り;4月植で8月と11月に採取、1回刈り;4月植で11月に採取)とサトウキビ(4月植えで12月に採取)でほぼ同じであるが、可溶性糖、デンプン含有率には、作物及び品種間で幅広い変異がある(表1)。可溶性糖含有率の平均値は、ソルガムとサトウキビで高く、デンプン含有率の平均値はイネで高い。
- 細胞壁成分中のヘミセルロース、セルロース、リグニン含有率をみると、3作物ともセルロースが多く、リグニンが少ない(図1)。作物間差をみると、イネは、サトウキビやソルガムに比べてリグニン含有率が低い。
- 細胞壁成分中のセルロース糖化効率は、リグニン含有率が低いほど高まる傾向にある(図2)。イネは、他作物よりリグニン含有率が低く、セルロース糖化効率が高い。
- 「九州交4号」はリグニン合成変異を有する褐色中脈変異(brown-midrib, bmr)品種であり、リグニン含有率が低く、セルロース糖化効率が高い。
成果の活用面・留意点
- NSC含有率は、栽培管理法やサンプリング時期によっても変動する。
- 「九州交4号」の高い糖化効率には、リグニン含有率以外の要因が関わっている可能性がある。
- エタノール生産を目的とした作物及び品種の選定の際に参考に出来る。
具体的データ



その他
- 研究課題名: ソルガム等イネ科作物の茎葉部分成分の解析
- 中課題整理番号: 1224
- 予算区分:委託プロ(地域バイオマス)
- 研究期間:2007~2010年度
- 研究担当者:荒井裕見子、趙鋭、井田仁(クミアイ化学)、吉永悟志、石丸努、高井俊之、前田英郎、
西谷和彦(東北大)、我有満、松岡誠、寺島義文、朴正一、池正和、徳安健、近藤始彦