米麹を用いた100%米粉パンの新たな製法技術
要約
米粉に米麹を添加して前醗酵することで、膨らみの向上した100%米粉パンを作ることが出来る。本法における米の適性品質として、20%~25% 程度のアミロース含量および貯蔵タンパク質変異系統が、膨らみと食味の両方に良好である。
- キーワード:100%米粉パン、米麹、アミロース、貯蔵タンパク質、プロテアーゼ
- 担当:作物開発・利用・水稲品種開発・利用
- 代表連絡先:電話 029-838-8951
- 研究所名:作物研究所・稲研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
米粉分量の多いパンは、米の需要拡大にとって大きなメリットであり、特に100%米粉パンは小麦グルテンを使用しないため、小麦アレルギーに対応した米粉パンでもある。現在の100%米粉パンの作製法は、グルテンの代わりにグアガムやヒドロキシプロピルメチルセルロース等の増粘多糖の添加が主流であるが、消費者の添加剤に対する抵抗感や、食味・食感の低下、コストが高いといった問題があった。そこで、身近な材料で、且つ簡易に100%米粉パンを製造する方法を開発する。
成果の内容・特徴
- 米粉に米麹と水を添加し混ぜたものを、55°Cで6時間以上前醗酵することで、米麹を添加しない米粉に比べて、パンの膨らみが約2倍程度向上する(図1)。
- 麹醗酵中の米粉における酵素活性を測定したところ、プロテアーゼ活性が醗酵時間の経過とともに上昇し、パンの膨らみの向上と相関が見られる(図2)。
- アミロース含量の影響について検討した結果、15%程度以上のアミロース含量の米で膨らみが、20%~25%程度のアミロース含量の米で膨らみと食感の両方が良好である(図3)。
- 貯蔵タンパク質の影響について検討した結果、グロブリン欠失は醗酵臭を低減化し、風味の向上に寄与する。なお低グルテリン性とグロブリン欠失は共に膨らみを低下させることはない(図4)。
成果の活用面・留意点
- 市販の米麹を用いる場合には、麹の種類や活性によって必要な醗酵時間が異なる。
- 米麹菌由来の食品添加用プロテアーゼ製剤でも、同様の結果が得られる。
- 食経験豊富な米麹を用いた製法技術であるため、消費者にとって安心であり、一般家庭でも作製できる簡易な方法である。
具体的データ




(濱田 茂樹)
その他
- 中課題名:米粉等加工用・業務用水稲品種の育成及び米の未利用成分利用技術の開発
- 中課題番号:112a0
- 予算区分:交付金、委託プロ(加工プロ)
- 研究期間:2010~2011年度
- 研究担当者:濱田茂樹、青木法明、鈴木保宏
- 発表論文等:濱田ら「麹等カビによる前醗酵工程を含む米粉パンの製法」特願 2010-266917