高品質で病虫害に強いカンショ新品種「あいこまち」
要約
「あいこまち」の食味は「ベニアズマ」並みに優れ、調理後の黒変が少なく、糖度が高い。いもの条溝がなく、外観が良い。サツマイモネコブセンチュウと黒斑病に強く、つる割病と立枯病に中程度の抵抗性を持つ。いも菓子類への加工にも適する。
- キーワード:サツマイモ、青果用、高品質、病虫害抵抗性、加工適性
- 担当:ブランド農産物開発・カンショ品種開発・利用
- 代表連絡先:電話 029-838-8500
- 研究所名:作物研究所・畑作物研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
関東地方の青果用カンショは、1984年育成の「ベニアズマ」が20年近く栽培面積の大部分を占めてきたが、近年は新しい品種を導入してブランド化を進める動きが広がっている。また、「ベニアズマ」はいもが大きくなりすぎて変形し、外観が悪くなること、良食味であるが、収穫直後や年によっては糖度が低く食味が劣ることが問題になっている。一方、いも菓子類の加工業者では大量仕入れできることから「ベニアズマ」を使用しているが、調理後黒変が多いことや品質が一定しないことが難点になっている。また、既存の青果用品種「ベニアズマ」と「高系14号」は病虫害抵抗性が十分ではない。そこで、いもの外観が良く、糖度が高く良食味で、いも菓子への加工適性が高く、病虫害抵抗性に優れた品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 「あいこまち」(旧系統名:関東128号)は、でん粉の糊化温度が低く蒸しいもの糖度が高い「クイックスイート」を母、多収で条溝がなく立枯病、サツマイモネコブセンチュウに強い「関系107」を父とする交配組合せから選抜した品種である。
- 蒸しいもの食味は「ベニアズマ」並みに優れ、調理後の黒変が少ない。β-アミラーゼ活性が高く、糖度が高い。(表1、図1)
- 条溝がなく、「ベニアズマ」に比べていもの外観が良い。いもの平均一個重は「ベニアズマ」よりやや軽く、いもが大きくなりすぎることは少ない。収量は「ベニアズマ」並である。(図1、表2)
- サツマイモネコブセンチュウ、黒斑病に強く、つる割病と立枯病に対しても中程度以上の抵抗性を持つ。また、「ベニアズマ」よりも貯蔵性が良い。(表2)
- いもようかん、大学いも等のいも菓子類への加工にも適する汎用性を持つ。(表3)
成果の活用面・留意点
- 栽培適地は全国のカンショ栽培地域である。茨城県行方市と鉾田市の一部生産者が栽培する見込みである。
- 萌芽性がやや不良なので、伏せ込み時の温度によっては催芽処理などを行うことが望ましい。
具体的データ
(高田明子)
その他
- 中課題名:高品質・高付加価値で省力栽培適性に優れたカンショの開発
- 中課題番号:320b0
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2001~2011年度
- 研究担当者:高田明子、熊谷亨、藏之内利和、中村善行、中谷誠、藤田敏郎、田宮誠司、片山健二
- 発表論文等:2012年5月品種登録出願(出願番号:27050号)