収量性が高く品質の良い蒸切干加工用カンショ新品種「ほしこがね」
要約
カンショ「ほしこがね」は、「シロタ」障害の発生がほぼみられず、蒸切干の外観・食味が良好な蒸切干加工用品種で、多収性品種「タマユタカ」に近い収量性を有する。
- キーワード:サツマイモ、加工用、蒸切干、シロタ障害、収量性
- 担当:ブランド農産物開発・カンショ品種開発・利用
- 代表連絡先:電話 029-838-8500
- 研究所名:作物研究所・畑作物研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
カンショ蒸切干は茨城県を中心に生産されており、作付け品種としては「タマユタカ」が9割以上を占める。しかし、この品種は蒸切干に「シロタ」と呼ばれる品質障害が発生しやすく、問題となっている。2011年に登録された「ほしキラリ」は、この点を改善するとともに、外観や食味が大幅に向上した品種であるが、「タマユタカ」に比べて収量性の不十分さが指摘されている。そこで、収量性が優れるとともに、「タマユタカ」より蒸切干の外観・品質が良い蒸切干加工用品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 「ほしこがね」(旧系統名:関東131号)は、やや多収でいもの外観が優れる「関東120号」を母、でん粉の糊化温度が低い「クイックスイート」を父とする交配組合せから選抜した品種である。
- 蒸切干の「シロタ」が「無」と、育成地では発生がみられない(表1)。
- 蒸切干の肉色は淡黄で、外観が優れる。蒸切干の食味は「やや上~上」であり、「タマユタカ」並みまたはやや優れる(図1、表1)。
- 上いも収量は「タマユタカ」の9割程度と、ほぼ同等である(表2)。
- サツマイモネコブセンチュウ抵抗性が「タマユタカ」より優れる(表3)。
成果の活用面・留意点
- 収量性・品質が優れる蒸切干加工用品種として期待され、茨城県ひたちなか市を中心とした蒸切干生産地帯で一部生産者が栽培する見込みである。
- 立枯病抵抗性が「弱」なので、同病害の発生圃場では土壌消毒等の防除に努める。
- 貯蔵中の塊根でん粉の糖化は早い傾向にあるので、年内出荷等の早めの加工に適する。
具体的データ
(藏之内利和)
その他
- 中課題名:高品質・高付加価値で省力栽培適性に優れたカンショの開発
- 中課題番号:320b0
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2003年~2011年度
- 研究担当者:藏之内利和・熊谷亨・中村善行・高田明子・藤田敏郎・中谷誠・片山健二
- 発表論文等:2012年3月品種登録出願(出願番号:26789号)