ダイズ子実への高カドミウム蓄積性を判別できる高精度DNAマーカー

要約

ダイズの高カドミウム蓄積性を判別する高精度なDNAマーカーを開発した。このDNAマーカーは、品種育成の過程で高カドミウム蓄積性品種・系統の選抜に利用できる。

  • キーワード:ダイズ、カドミウム蓄積性、品種育成、DNAマーカー
  • 担当:作物開発・利用・大豆品種開発・利用
  • 代表連絡先:電話 029-838-8503
  • 研究所名:作物研究所・畑作物研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

カドミウムは、人体に有害な影響を与える重金属元素であり、イネなどと同様にダイズにおいてもそのリスク低減技術の開発が求められている。品種育成の過程で高カドミウム蓄積性系統を除外することは、カドミウムリスク低減に対する有効な手段の一つである。
ダイズのカドミウム蓄積性は品種間差があることが知られている。そこでカドミウム蓄積性を判別する高精度なDNAマーカーの開発により、育成過程で高カドミウム蓄積性系統を効率的に除外できる手法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 高カドミウム蓄積性品種「Harosoy」と低蓄積性品種「フクユタカ」の組換自殖系統の子実中カドミウム濃度に関して検出されたQTL領域に関して詳細な遺伝子解析を行い、「Harosoy」の高カドミウム蓄積性を高精度に判別するdCAPSマーカーを開発した(表1、図1)。
  • 過去に高カドミウム蓄積性品種として判別された品種をこのマーカーで検定すると、遺伝背景に関わらず全て「Harosoy」型を示した。
  • 交配親として用いられる可能性がある国内外の品種を2011年度にカドミウム検定圃場で栽培し、マーカー遺伝子型と子実中カドミウム濃度を調査したところ、子実中カドミウム濃度が高い品種は「Harosoy」型、低い品種は「フクユタカ」型を示す傾向が認められた(図2)。

成果の活用面・留意点

子実中カドミウム濃度は、他の効果が小さい遺伝的要因により変動する可能性があるため、品種化の際には実際に子実中カドミウム濃度を測定してカドミウム蓄積性を確認する必要がある。

具体的データ

 表1,図1~2

その他

  • 中課題名:気候区分に対応した安定多収・良質大豆品種の育成と品質制御技術の開発
  • 中課題番号:112f0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(生産工程)
  • 研究期間:2010~2012年度
  • 研究担当者:平田香里、羽鹿牧太、Eduardo R. Benitez、高橋良二、山田哲也、高橋浩司
  • 発表論文等:Benitez E.R. et al. (2012) Journal of Heredity 103(2): 278-286