早生茎葉多収で倒伏しにくい稲発酵粗飼料用水稲新品種候補「関東飼糯254号」

要約

「関東飼糯254号」は「夢あおば」と比較し出穂が6日遅いが黄熟期で2日早い早生であり、茎葉の割合が高く、全重が移植でも直播でも多収で、耐倒伏性が強い。また、株の再生も良く、難消化性のリグニン含量が低く、稲発酵粗飼料用として適する。

  • キーワード:稲発酵粗飼料、茎葉多収、早生、株再生、低リグニン
  • 担当:自給飼料生産・利用・飼料用稲品種開発
  • 代表連絡先:電話 029-838-8950
  • 研究所名:作物研究所・稲研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

2005年に育成された稲発酵粗飼料専用の極晩生品種「リーフスター」は、茎葉収量が多く子実の割合が低いことにより、乳牛用として広く用いられている。加えて、低リグニン性であることが見いだされ、付加価値を高めている。しかし、極晩生であるため栽培地域が限定されている。また、関東以西の主要な食用品種である「コシヒカリ」より早く収穫したいという農家のニーズも高く、早生の品種に対する強い要望がある。そこで、茎葉多収で、「コシヒカリ」より早く黄熟期の収穫が可能な品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「関東飼糯254号」は「おどろきもち」と「つ系1110」(後の「リーフスター」)、中国146号(後の「ホシアオバ」)を交配した後代に由来する糯種である(表1)。籾の色は赤黄~橙色で識別性がある。
  • 「関東飼糯254号」の早晩性は出穂期が「夢あおば」より6日遅い早生の晩、黄熟期で2日早い'早生の早'で、登熟期間が短い(表1)。
  • 「関東飼糯254号」は稈長が114cmと極長稈であるが耐倒伏性は「夢あおば」より強い'極強'で、湛水直播で中生の「ホシアオバ」と同等の収量があり、耐倒伏性は「ホシアオバ」より格段に強い(表1)。
  • 「関東飼糯254号」は、刈取り後のイネの再生にすぐれ、立毛放牧等で効率的に利用できる(表1、写真1)。
  • 「関東飼糯254号」は、消化されやすい茎葉の割合が高く、しかも難消化性のリグニン含量が低く、稲発酵粗飼料に適する(表1、図1)。
  • 粗玄米収量は49.3kg/aと「夢あおば」に比べて70%程度と少なく、玄米千粒重は17.1gで、小粒で細長い粒形をしている(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 白葉枯病に弱いので、常発地帯では作付しない。
  • 籾(玄米)収量がやや低いが、「リーフスター」より種子の生産性がやや高く、加えて小粒であるので箱当たりの播種量を減らすことも可能であり、採種コストの上昇の問題は「リーフスター」より軽減されると思われる。

具体的データ

 表,図1,写真1

その他

  • 中課題名:低コスト栽培向きの飼料用米品種及び稲発酵粗飼料用品種の育成
  • 中課題番号:120a0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(国産飼料)
  • 研究期間:1999~2012年度
  • 研究担当者:加藤浩、春原嘉弘、平林秀介、佐藤宏之、竹内善信、常松浩史、小林伸哉、黒木慎、後藤明俊、安東郁男、根本博、井辺時雄、太田久稔、前田英郎、出田収、石井卓朗、坂井 真、田中淳一、池谷智仁、津田直人、青木法明、平山正賢、田村和彦、田村泰章
  • 発表論文等:2013年度に品種登録出願予定