中生の多収・良質・良食味水稲品種「あきだわら」

要約

「あきだわら」は温暖地東部での熟期が中晩生に属する粳種である。食味は「コシヒカリ」に近い良食味で、「コシヒカリ」よりも収量性が明らかに高く、品質も良い。

  • キーワード:イネ、多収、品質、良食味、中晩生
  • 担当:作物開発・利用・水稲品種開発・利用
  • 代表連絡先:電話029-838-8536
  • 研究所名:作物研究所・稲研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

温暖地は良食味で市場評価の高い「コシヒカリ」の作付けが多いが、一方で一定レベルの食味・玄米品質を有する値頃感のある米が業務用として実需者から求められている。農業経営者の所得を確保しつつ、こうした実需者ニーズに応えるために、業務用に適する多収で良質・良食味品種の開発を行う。

成果の内容・特徴

  • 「あきだわら」は多収で食味のやや良い「関東188号(後のミレニシキ)」と良質で良食味の「越南176号(後のイクヒカリ)」の交雑後代より育成された粳種である。
  • 育成地における出穂期は「月の光」と同程度の"中生の中"、成熟期は「日本晴」と同程度で"中生の晩"熟期に属する(表1)。
  • 稈長は「日本晴」よりやや短い。穂数は「日本晴」より少なく、草型は"偏穂重型"である(表1)。
  • 玄米重は、「日本晴」に対して早植・標肥で13%、早植・多肥で13%多収である。また標肥の「コシヒカリ」に対して多肥では31%多収である(表1)。
  • 収量構成要素は、「月の光」と比較して一穂籾数が多く、穂数はやや少ないが籾数/m2が多い。千粒重、登熟歩合はやや低い(表2)。
  • 耐倒伏性は「日本晴」並の"やや強"である(表1、図1)。
  • 穂発芽性は、「日本晴」よりやや難の"やや難"である(表1)。
  • いもち病真性抵抗性遺伝子型はPiiと推定される。圃場抵抗性は、葉いもちが"弱"、穂いもちが"やや弱"である。白葉枯病抵抗性は"やや強"である。縞葉枯病には"罹病性"である(表1)。
  • 玄米の外観品質は、「日本晴」並で、「コシヒカリ」よりやや優る"中の上"である。高温登熟耐性は、「日本晴」並の"中"である(表1)。
  • 炊飯米の食味は、「月の光」より明らかに優り、「コシヒカリ」に近く良食味である(表1)。

普及のための参考情報

  • 普及予定地は北陸及び関東以西である。2013年度は茨城、千葉、栃木、新潟、福島、兵庫の6県で産地品種銘柄に指定され、茨城、千葉を中心に約450ha作付けされている。2015年度には兵庫で本格的生産が計画されており、約1000haの作付けが見込まれる。
  • 多肥で多収となるが、いもち病に弱く耐倒伏性も十分でないため、極端な多肥は避け、いもち病の防除を行う。縞葉枯病に罹病性なので、常発地での栽培は避ける。
  • 「あきだわら」は2011年3月に品種登録された(登録番号20717)。

具体的データ

表1
表2
図1

その他

  • 中課題名:米粉等加工用・業務用水稲品種の育成及び米の未利用成分利用技術の開発
  • 中課題整理番号:112a0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1998~2013年度
  • 研究担当者:石井卓朗、小林伸哉、平林秀介、竹内善信、後藤明俊、黒木慎、田中淳一、 常松浩史、安東郁男、根本博、春原嘉弘、加藤浩、太田久稔、前田英郎、井辺時雄、佐 藤宏之、出田収、平山正賢、坂井真、田村和彦、青木法明、池ヶ谷智仁、津田直人
  • 発表論文等:品種登録2011年3月18日(第20717 号)