グルコース測定に基づく糖質米の新たな簡易選抜

要約

米粒中のグルコース含有率とフィトグリコーゲン含有率の間には、正の相関がある。この相関を活用してグルコース含有率を測定することで、糖質米を簡易に選抜することが可能である。

  • キーワード:sugary-1、糖質米、フィトグリコーゲン、グルコース
  • 担当:作物開発・利用、水稲開発・利用
  • 代表連絡先:電話 029-838-8951
  • 研究所名:作物研究所・稲研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

米の多用途利用には、特色ある米の育成が重要である。糖質米品種 (sugary-1) は、胚乳内部にデンプンの代わりにフィトグリコーゲンを蓄積することから、これまでの米とは異なった加工特性を示す。さらに、ギャバ含有率も一般品種と比較し3倍程度高いことが知られ、新たな利用価値が期待される。しかしその一方で、糖質米の玄米は扁平し外観品質が劣り、精米できなかった。そこで、これまでの扁平な外観に頼った選抜法ではなく、新たな選抜法を開発することを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 玄米半粒をグルコース検出試薬の中に浸すことで、糖質米粒を簡単に判別することができる。糖質米品種「あゆのひかり」や糖質米系統「北陸糖237号」は他の品種と比較し、4~5倍程度のグルコース含有率を示す(図1)。
  • グルコース含有率は、フィトグリコーゲン含有率と正の相関を示す(図2A)。「北陸糖237号」と「コシヒカリ」を交配して得られたF2集団の遺伝解析においても、グルコースとフィトグリコーゲンの含有率は正の相関を示し、劣性一遺伝子変異として期待される分離を示すことから、グルコース含有率により選抜は可能であると判断できる(図2B)。
  • 上記のF2集団から選抜された糖質米後代系統(F4)の玄米では、米粒の厚さが増している(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 玄米半粒をグルコース検出試薬に浸すだけで糖質米を判別できるため、交配後代の一次選抜に適している。

具体的データ

図1~3

その他

  • 中課題名:米粉等加工用・業務用水稲品種の育成及び米の未利用成分利用技術の開発
  • 中課題整理番号:112a0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2010?2013年度
  • 研究担当者:濱田茂樹、鈴木啓太郎、鈴木保宏
  • 発表論文等:Hamada et al. (2014) Development of a new selection method and quality improvement of sugary-1 rice mutants. Breeding Science 63: 461-467