水稲のセシウム吸収・蓄積は土壌交換性セシウム/カリウム比と関係が高い

要約

水稲のセシウム吸収量や玄米のセシウム濃度は土壌のバーミキュライト量に関わらず土壌交換性セシウム/カリウム比と正相関が高い。

  • キーワード:交換性カリウム、交換性セシウム、水稲、放射性セシウム
  • 担当:放射能対策技術・移行低減
  • 代表連絡先:電話 029-838-8952
  • 研究所名:作物研究所・稲研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

コメの放射性セシウム濃度の軽減対策を確立するためには、セシウムの吸収、蓄積に影響する土壌要因の解明が必要である。これまでコメの放射性セシウム濃度は土壌の交換性カリウムが高まると低下する関係があることが知られているが、セシウム固定能の高いバーミキュライトが多い土壌などではよりセシウム濃度が低くなる傾向がみられている。そこで、土壌のセシウム供給力の影響を定量化するために交換性セシウムおよび交換性カリウムと水稲のセシウムの吸収、蓄積との関係を明らかにし両者を組み合わせた土壌指標を示す。

成果の内容・特徴

  • 異なる土壌間で総非放射性セシウム(133Cs)量に対する交換性非放射性セシウム量の割合には変動があり、バーミキュライトを多く含む土壌では低い傾向にある(図1)。同様に汚染土壌では総放射性セシウム(137Cs)量に対する交換性放射性セシウム量はバーミキュライトを多く含む土壌で低い傾向にある。
  • 水稲の非放射性セシウム吸収量は交換性カリウムが高い土壌で低下する(図2上図)。バーミキュライトが多く含まれる土壌では、吸収量は交換性カリウムに対して低い場合がある(図2上図)。また、非放射性セシウム吸収量は交換性セシウムが高い土壌で増加する傾向にあるが有意な関係はみられない(図2下図)。
  • 一方、非放射性セシウム吸収量は交換性セシウム/カリウム比と高い相関がみられる(図3)。
  • 汚染土壌における玄米の放射性セシウム濃度も交換性放射性セシウム/カリウム比と相関が認められる(図4)。
  • 以上より交換性セシウム/カリウム比は土壌のバーミキュライト量に関わらず水稲のセシウムの吸収、蓄積の土壌指標となり得ると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 圃場での検証を行うことにより、セシウム吸収、蓄積を推定する土壌指標として圃場条件で活用するための基礎知見となる。
  • 水稲品種「ひとめぼれ」を用いたポット試験における結果である。
  • 非汚染土壌は茨城県、栃木県の水田・畑土壌である。汚染土壌は2011年12月に採取した福島県内の水田土壌であり、2011年12月に栽培に供試している。また全ての土壌特性の測定は栽培前の風乾土壌を用いている。

具体的データ

図1~4

その他

  • 中課題名:農作物等における放射性物質の移行動態の解明と移行制御技術の開発
  • 中課題整理番号:510b0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(除染プロ)、競争的資金(実用技術)
  • 研究期間:2011~2014年度
  • 研究担当者:近藤始彦、江口哲也、牧野知之(農環研)、木方展冶(農環研)、佐藤睦人(福島県農総セ)、藤村恵人、八戸真弓、濱松潮香、木村武、後藤明俊、前田英朗、中野洋、高井俊之、荒井裕見子
  • 発表論文等:
    1)Kondo M.et al. (2015) Soil Sci. Plant Nutr.61: :133-143
    2)Kondo M.et al. (2015) Soil Sci. Plant Nutr.61: :144-151