汚染地域で栽培したアマランサス属の放射性セシウム吸収特性

要約

汚染地域で栽培したアマランサスの放射性セシウム濃度は葉部が高い。アマランサスによる放射性セシウムの移行係数はケナフより高いが、除去率は最大が0.283%と低くファイトレメディエーションの効果は低い。

  • キーワード:アマランサス、放射性セシウム、移行係数、除去率、ファイトレメディエーション
  • 担当:放射能対策技術・移行低減
  • 代表連絡先:電話 024-593-6176
  • 研究所名:作物研究所・畑作物研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ヒユ科一年生のアマランサス属作物(Amaranthus spp.)は土壌から植物体への放射性セシウムの移行性が高いことが報告されている。東京電力福島第一原子力発電所の事故による土壌汚染に対してアマランサスによる放射性セシウムのファイトレメディエーションが期待されてきた。そのため福島県内の汚染地域における田圃場と畑圃場において2011年から2013年の3カ年にわたりアマランサス2種(Amaranthus hypochondriacus L.およびAmaranthus caudatus L.)に希少金属類の土壌浄化に有効と考えられているケナフ(Hibiscus cannabinus L.)を比較として栽培試験を行い、その効果・効率を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 汚染地域で栽培したアマランサスの放射性セシウム濃度(Cs134とCs137の合算値)は、葉が2000Bq/kgを超え最も高く、穂が1000Bq/kgを超え、種子が最も低い(図1)。このとき植物体全体の乾物重に対する各部位の割合は、穂が40%を超え最も高く、葉は最も低い(図2)。
  • アマランサス2種の放射性セシウム濃度に種間差は認められない(図1)。
  • アマランサスの放射性セシウムの移行係数は0.020から0.354の範囲を示し、ケナフより高い(表1)。移行係数は田圃場の方が畑圃場より高く、また、2011年以降は低下する傾向がある。
  • アマランサスによる土壌中からの放射性セシウムの除去率はケナフより高いが、最大値が「メキシコ系」の0.283%(2011年田圃場)にとどまり低い。以上からアマランサス栽培による放射性セシウムのファイトレメディエーション効果は低い(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 農地土壌の放射性セシウムに対するファイトレメディエーションの参考とする。
  • 試験は福島県川俣町において3カ年にわたり同一の田圃場(非湛水)および畑圃場で実施し、連作栽培ではない。田、畑圃場における3ヶ年平均の土壌中放射性セシウム濃度はそれぞれ4536 Bq/kg、3499 Bq/kg、交換性カリは、それぞれ17.8 mg K2O/100g、49.2 mg K2O/100gである。

具体的データ

図1~2,表1~2

その他

  • 中課題名:農作物等における放射性物質の移行動態の解明と移行制御技術の開発
  • 中課題整理番号:510b0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(除染プロ)
  • 研究期間:2011~2013年度
  • 研究担当者:大潟直樹、藤田敏郎、加藤晶子
  • 発表論文等:大潟ら(2015)日作紀、84(1):9-16