イタリアンライグラス耐倒伏性早生新品種「ニオウダチ」の育成

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要約

耐倒伏性品種「タチワセ」に比べて耐倒伏性が優り、収量は同程度かやや劣るイタリアンライグラス新品種「ニオウダチ」を育成した。出穂期は「タチワセ」と同程度の早生である。関東以西に適応するが、冠さび病には弱い。

  • 担当:草地試験場・育種部・育種素材研究室
  • 連絡先:0287-36-0111
  • 部会名:草地・育種
  • 専門:育種
  • 対象:牧草類
  • 分類:普及

背景・ねらい

イタリアンライグラスを飼料基盤とする畜産経営においても、規模拡大に伴ってイタリアンライグラスの利用は青刈利用(草丈50~70cmで刈取)から出穂 期刈によるサイレージまたは乾草利用に変化してきた。これにともない、機械収穫が主流となり、耐倒伏性品種の育成が要望されてきた。

成果の内容・特徴

「ワセアオバ」を母材として、3回の個体選抜と1回の母系選抜によって、早生で倒伏に強い短期利用型の「ニオウダチ」を育成した。

  • 乾物収量は、「タチワセ」に比べて山口、熊本(九州農試)では劣り、関東、北陸、南九州では同程度かやや劣る(表1)。
  • 耐倒伏性は、「タチワセ」より優っていた。他の品種に顕著な倒伏が発生した場合に、特に強い耐倒伏性を示す(表2)。
  • 「ニオウダチ」の出穂期は5月上旬であり、「タチワセ」と同程度の早生である(表3)。ただし、宮崎では特異的に「タチワセ」より1週間程度早く出穂した。
  • 草丈は「タチワセ」よりやや低く、茎は太い(表3)。特に暖地(山口、神奈川、宮崎)では、草丈が低くなる傾向がみられる。
  • 茎の形態は、「タチワセ」と比較すると茎の太さが太く(表3)、1茎重が重く、また曲げ抵抗も大きい。これらの特性が耐倒伏性に関与していると考えられる。
  • 冠さび病抵抗性は、「タチワセ」同様に弱である(表3)。
  • 初期草勢は、「タチワセ」よりやや劣っている(表3)。
  • 1番草刈取り後の再生は、「タチワセ」とほぼ同じである(表3)。
  • 越冬性は、「タチワセ」並である(表3)。
  • 1番草の乾物率は、「タチワセ」よりやや低い(表3)。
  • 採種性は精選種子重で13.8kgであり、「タチワセ」より優れている(表3)。
  • 乾物分解率(セルラーゼ法)は、「タチワセ」より高い(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 普及対象地域は関東以西である。
  • 冠さび病に弱いので、多発地域の2番草では、刈遅れにならないように留意する。

具体的データ

表1 2~3年間平均の年間合計乾物収量

表2 3年間の倒伏程度

表3 「ニオウダチ」の特性の概要

 

 

その他

  • 研究課題名:イタリアンライグラスの耐倒伏性検定
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成6年度(昭和54年~平成6年)
  • 発表論文等:倒伏性が異なるイタリアンライグラスにおける形態的差異、日本草地学
                      会第46回、1991