トリフルラリン処理による2核性花粉作出法とその利用

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要約

トリフルラリン溶液を開花前のとうもろこしの雄穂に噴霧することにより高頻度に受精能力のある2核性花粉を得ることが可能となった。この花粉を授粉すると発育不全粒を生じるが、染色体の倍数性操作に利用できる。

  • 担当:草地試験場・育種部・育種第2研究室
  • 連絡先:0287-36-0111
  • 部会名:草地・育種
  • 専門:育種
  • 対象:雑穀類
  • 分類:研究

背景・ねらい

半数体、4倍体など倍数性の異なる素材は育種的な利用価値が大きいが、とうもろこしにおいては葯培養による半数化は煩雑な操作が必要であり、コルヒチンに よる倍数化は困難性が高い。一方、とうもろこしでは正常な系統でもわずかな頻度(0.1-1%)で半数体や3倍体を生じることがある。この原因としては花 粉核の第2分裂の異常により核数が変化した花粉が受精に関与している可能性が考えられる。今回こうした異常な花粉の頻度を薬剤処理によって高める方法の開 発を試み成功した。

成果の内容・特徴

  • 雄穂抽出直前のとうもろこし(2倍体)の雄穂にトリフルラリン溶液(トレファノサイド乳剤-0.1%)を噴霧しアルミホイルで24時間覆う。この処理により開花1日目の花粉は約10%の正常な3核性花粉(精細胞はn)と花粉の第2分裂が阻害されて生じた約90%の2核性花粉(精細胞は2n)(図1)の混合花粉となる。
  • 2核性花粉の一部には受精能力があるが、2倍体とうもろこしに授粉した場合には受精後の胚乳核は4nとなるため胚乳組織は発育不全となり(図2)発芽しない。
  • 2倍体自殖系統5系統にトリフルラリン処理を行い得られた花粉を授粉した。発育不全粒の頻度は0.4%から22.4%に上昇し、2核性花粉が受精していることが明らかとなった(表1)。
  • 4倍体とうもろこしにトリフルラリン処理花粉を交配したところ7本の交配雌穂から117粒の正常に発達した種子が得られ、このうち8粒は2倍体であった。このことから2核性花粉には4倍体を半数化する能力があると考えられた。
  • トリフルラリン処理した花粉を2倍体とうもころしへ交配すると正常粒の10%の胚は3倍体となる(100粒中10粒)。こうして得られた8個体の3倍体植物にトリフルラリン処理花粉をさらに交配たところ2個体の4倍体植物を得ることができた。

成果の活用面・留意点

  • とうもころしの倍数性操作に利用できる。また2核性花粉の2nの精細胞は遺伝的にホモであることから、これから胚を誘導する技術が開発されれば純系を作出できる可能性があるため、純系作出の基礎技術として有効である。
  • 処理時期、処理濃度により花粉の受精能力は大きく影響を受けるので、最適条件で処理された花粉を用いること。

具体的データ

図1 トリフルラリン処理により得られた2核性花粉

図2 正常な穂(左)とトリフルラリン処理花粉を交配した穂(右)

表1 トリフルラリン処理花粉の授粉による発育不全粒、不稔粒の発生程度

その他

  • 研究課題名:雌性生殖を利用したとうもろこしの半数体作出法の開発
  • 予算区分 :平成4年~平成6年
  • 研究期間 :経常 場内プロ
  • 発表論文等:2核性花粉による4倍体トウモロコシの半数化 育種学雑誌別冊1:180