アルファルファ雄性不稔個体の組織培養によるクローン増殖後の変異
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要約
アルファルファの雄性不稔個体を組織培養から得られる不定胚でクローン増殖した場合のソマクローナル変異の影響を検討した。その結果、雄性不稔性は維持され、F1品種の種子親とする場合の種子生産性も問題のないことを明らかにした。
- 担当:草地試験場・育種部・育種素材研究室
- 連絡先:0287-36-0111
- 部会名:草地・育種
- 専門:育種
- 対象:牧草類
- 分類:研究
背景・ねらい
アルファルファ一代雑種品種の育成には、雄性不稔個体を組織培養から得られる不定胚によって大量増殖することが期待されるが、再分化植物にみられるソマクローナル変異の影響が問題となる。そこで、再分化植物を茎頂由来の栄養系と比較して、ソマクローナル変異が実用上問題となるか否かについて検討した。
成果の内容・特徴
アルファルファの部分雄性不稔個体(MSxC77)-1を組織培養により形成される不定胚でクローン増殖し(SD5B法、Okumura et al. 1993)、再分化植物およびこれらを種子親にしたF1植物の種子生産に関与する形質について変異を調べた。
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雄性不稔個体(MS×C77)-1の再分化植物14個体中2個体で染色体の倍加がみられたが、この染色体倍加個体は葉の肥厚等の外部形態の変化により容易に識別することができた(図1)。
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形態に異常がみられなかった12個体の再分化植物と再分化を経ていない茎頂由来植物の間で、花粉粒数、自殖および交配種子の着粒数を比較した(表1)。その結果、再分化植物と茎頂由来植物との差異は小さく、ソマクローナル変異の程度は実用上問題にならない。
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ソマクローナル変異の次代への影響を調べるため、雄性可稔個体(CUF101-56)を共通の花粉親として、雄性不稔個体(MS×C77)-1の再分化植物および茎頂由来植物との間のF1系統の間で、開花日、頭花数、花数および花粉粒数を比較した(表2)。その結果、開花日で3系統、花数で2系統が茎頂由来F1と有意な差を示した。しかし、茎頂由来F1系統でもかなり大きな変異幅がみられること、再分化植物由来系統の平均でみると茎頂由来の系統とほとんど差がみられないことから、採種関連形質については、実用上の影響は無視し得る程度である。
成果の活用面・留意点
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大量にクローン増殖した雄性不稔個体を利用して、一代雑種品種の育成が期待される。
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染色体倍加個体がF1種子生産に及ぼす影響を検討する必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:牧草類の組織培養による保存・増殖後の遺伝的変異の解明
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成6年度(平成2年~6年)
- 発表論文等:Variations in pollen production and seed set of male sterile
alfalfa somaclones, Breeding Science, 45(1), 1995.