とうもろこし茎葉の消化性検定のための試料採取法

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要約

とうもろこし茎葉の消化性は、日射条件による変動の大きな単少糖等の可溶性成分に影響されるため、熟期の異なる品種・系統間差を検定するには、生育ステージ(黄熟中期)を基準にするより、黄熟中期付近の同一日に試料採取を行う必要がある。また、採取回数を増すとさらに精度を高めることができる。

  • 担当:草地試験場・育種部・育種化学研究室
  • 連絡先:0287-36-0111
  • 部会名:草地・育種
  • 専門:育種
  • 対象:雑穀類
  • 分類:研究

背景・ねらい

飼料用とうもろこしの品質を向上させるためには、茎葉の消化性に優れた品種を育成することが重要である。茎葉の消化性は気象条件による変動が大きい単少糖含量等の可溶性成分に影響されるため、品種・系統間の消化特性を正確に検定するための試料採取条件を検討する。

成果の内容・特徴

黄熟中期が最大で1週間程度異なる6品種・系統を2年間栽培し、酵素による乾物分解率、単少糖含量を測定し、品種間差を検定するための試料採取条件を明らかにした。

  • 黄熟中期を中心に前後2週間の茎葉乾物分解率の変動は小さかった。
  • 黄熟中期前後の各品種の茎葉乾物分解率の2年間の相関は暦日基準(同一日採取)では生育ステージ基準に比べ高い相関が得られた。また、採取回数を増すと高い相関が得られた(第1図)。
  • 茎葉乾物分解率の同一年度内の相関は暦日基準では生育ステージ基準に比べ高い相関が得られたが、生育ステージ基準では全く相関が得られない場合もみられた(第2図)。
  • 茎単少糖含量はどの場合も茎葉乾物分解率に比べ相関程度は低かった(第1、2図)。
  • 寡照年においては茎葉乾物分解率は採取日前の日射条件により変動した(第3図)。また、これらの変動は茎単少糖含量の変動と同一傾向を示した。
  • 茎葉乾物分解率と茎単少糖含量間には各年度においては高い相関が得られたが、茎単少糖含量は年度によって大きく異なった(第4図)。以上の結果から、茎葉の消化性の検定においては、日射条件による変動が大きな誤差要因となるため、熟期幅が1週間程度の品種間の消化性を検定する場合、試料採取は生育ステージ(黄熟中期)を基準にするより黄熟中期付近の同一日に行う。また、精度の高い検定を必要とする場合は採取回数を増す。

成果の活用面・留意点

  • 育種現場におけるとうもろこしの茎葉消化性の評価、選抜に利用できる。
  • 熟期の大きく異なる品種間の検定には適用できない。稈汁糖度(茎単少糖含量)からの消化性の簡易推定は精度がやや劣るため試料採取条件(個体数、回数)に注意するとともに、品種間比較は同一年度に栽培したものに限る。

具体的データ

図1 茎葉乾物分解率と茎単少糖含量の年度間相関

図2 茎葉乾物分解率と茎単少糖含量の年度内相関

図3 茎葉乾物分解率と茎単少糖含量の変動

図4 茎葉乾物分解率と茎単少糖含量の関係

その他

  • 研究課題名:とうもろこし茎葉の単少糖の挙動と消化特性
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成3年~6年
  • 発表論文等:とうもろこし茎葉の単少糖の挙動と消化特性、日草誌、39(別)、1993