高二酸化炭素濃度・高温がオーチャードグラスの体内成分に及ぼす影響
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要約
高二酸化炭素濃度(CO2)はオーチャードグラスの細胞壁物質(CW)の割合を高め、窒素含量・ミネラル含量を低下させ、また、高温もCWを高め、飼料価値を低下させることが明らかとなった。その効果は、CO2の方が大きかった。
- 担当:草地試験場・草地計画部・草地機能研究室
- 連絡先:0287-36-0111
- 部会名:草地・永年草地・放牧
- 専門:環境保全
- 対象:牧草類
- 分類:研究
背景・ねらい
CO2濃度・気温の上昇等の地球環境変化が予測されており、牧草・草地に及ぼす影響の解明が待たれている。C3植物の場合、ある程度の乾物重の増大が期待されているが、家畜の飼料としての栄養価についてはほとんど未解明である。ここでは、高CO2濃度・高温が牧草の体内成分に与える影響について明らかにする。
成果の内容・特徴
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現有大気の350ppmCO2と700ppmCO2にコントロールしたガラス室内において、ポット(1/5000a)でオーチャードグラスを育成した。生育温度は20、25、30°C(夜間温度はそれぞれ5°C低下させた)で、それぞれ3-4か月にわたり長期の育成を図り、再生間隔:30-40日ごとにサンプリングを行い、乾燥後に体内成分分析を行った。施肥量は、元肥としてポット当たり、炭酸カルシウム50g、溶性リン肥50g、過燐酸石灰30g、化成肥料(N17-P20517-K2017)10gを施し、さらに刈取り(30-40日)ごとに化成肥料5gを追肥した。
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高CO2濃度下では、CW及び低消化性有機物(Ob)が増大し、灰分(ASH)が減少した(図1)。これに温度上昇が加味されると(特に20°Cから25°Cへ)CWの増大が著しかった。
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体内元素分析では、全試験(350ppm群では9回、700ppm群では13回)を通した平均値では、700ppm区が葉身、茎とも、茎中のPを除いて、N、P、K、Ca、Mgとも減少の傾向にあった(表1)。特に、Mgの低下が著しかった。温度の上昇による影響は、鮮明ではなかった。
以上より、高CO2濃度によりCW及びObが増大し、N、P、K、Ca、Mg-特にMgが減少し、また、高温により、CWが一層増大した。従って、高CO2濃度・高温下では、飼料価値の低下が予測される。
成果の活用面・留意点
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到来しつつある地球温暖化(高CO2濃度・高温)におけるオーチャードグラスの栄養評価の予見・モデル化に活用できる。
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本試験は、多量の施肥を行った条件下で得られた値であり、低施肥下での値はかなり低い値が予測される。
具体的データ


その他
- 研究課題名:環境変化に伴う農林水産生態系の動態の解明
- -牧草の生理機能に及ぼす影響-
- 予算区分 :一般別枠・地球環境
- 研究期間 :平成6年度(平成5~8年)
- 発表論文等:二酸化炭素濃度倍増下におけるオーチャードグラスの生育2、
体内成分の変化、日草誌(別)41