ペレニアルライグラスに含まれる採食促進作用及び抑制作用を持つ化学物質の抽出
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要約
ペレニアルライグラスに含まれる採食促進作用を持つ物質は、それを抽出した条件から、極性が強く揮発し難い性質を持つことが示された。
- 担当:草地試験場・生態部・家畜生態研究室
- 連絡先:0287-36-0111
- 部会名:草地・永年草地・放牧
畜産
- 専門:飼育管理
- 対象:家畜類
牧草類
- 分類:研究
背景・ねらい
家畜の採食行動を制御する技術を開発する上で、採食を促進するにおい物質やあじ物資等の化学物質を解明することが必要である。そこで、採食性のよいペレニアルライグラスから極性の異なる有機溶媒を用いた抽出を行い、抽出物の採食促進作用を検討した。
成果の内容・特徴
極性が大きく異なるメチルアルコールとn-ペンタンを用い、ペレニアルライグラス(フレンド)から化学物質を含む抽出液を得た(図1)。この抽出液を添加した乾草と対照区の乾草(約2cmに細断)をヤギに自由に採食させ、抽出物の嗜好性の検定を行った。また、n-ペンタン抽出液に多量に含まれ、単独で葉のにおいを有するにおい物質の嗜好性についても検討した。実験に用いた乾草は、草地試験場内のオーチャードグラス主体の草地の2番草から調製した。
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極性溶媒であるメチルアルコールの抽出物を含む水溶液を添加した乾草は、水溶液のみを添加した乾草に比べ、有意に(1%水準)多くヤギに採食された(図2)。
- メチルアルコール抽出物の水溶液に含まれる化学物質は、用いた有機溶媒の性質とエバポレターによるアルコール除去の条件から、極性が強く難揮発性の性質を有することが示された。
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メチルアルコール抽出物に比べ、無極性で易揮発性の物質を含むn-ペンタンの抽出液の添加は、乾草の採食性を改善しなかった。
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n-ペンタン抽出液中に多量に含まれ、植物生体内でしか生合成できず、単独で植物の葉のにおいを思わせるシス-3-ヘキセノールは、ヤギの採食を抑制した。また、同様な性質を有するトランス-2-ヘキセナールは、採食に有意な作用が認められなかった(図3)。
成果の活用面・留意点
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牧草の抽出物から採食促進作用を持つ化学物質を分離することが可能となり、また、牧草類の化学物質が関与する採食性の良否を判定する方法として利用できる可能性がある。
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乾草それ自体の採食性に差が生じないように、乾草を対照区と添加区に分ける前によく混合し、品質を均一にする必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:家畜の採食における選択機構の制御
- 予算区分 :大型別枠(生態秩序)
- 研究期間 :平成6年度(平成5~7年)
- 発表論文等:飼料中の採食促進物質の有機溶媒による抽出、第90回日本畜産学会大
会講演要旨