脂肪酸カルシウムの添加給与が肉用放牧子牛の体脂肪蓄積に及ぼす影響

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要約

肉用子牛の哺乳放牧期別飼飼料あるいは離乳・終牧後の育成期の補給飼料に脂肪酸カルシウムを添加給与すると成長が促進される。この成長促進は、皮下脂肪、筋間脂肪の厚さや枝肉の筋肉、脂肪及び骨の組織重量割合が体重にみあったものになっていたこと、体脂肪蓄積の昂進によるものではないことが明らかになった。

  • 担当:草地試験場・山地支場・家畜飼養研究室
  • 連絡先:0267-32-2356
  • 部会名:草地・永年牧草・放牧
  • 専門:飼育管理
  • 対象:家畜類
  • 分類:指導

背景・ねらい

脂肪酸カルシウム(以下、脂肪酸Ca)は極めてエネルギー力価の高い飼料添加物である。この脂肪酸カルシウムを肉用放牧子牛の別飼飼料や終牧・離乳後の補給飼料に添加給与すると、日増体量と体高の発達が促進されるが(草地成果情報、9号)、脂肪、特に長鎖脂肪には体脂肪に蓄積される代謝経路があるところから、脂肪を長期にわたって添加給与すると体脂肪の蓄積が昂進される可能性がある。そこで、肉用子牛の哺乳放牧期から離乳・育成期まで長鎖の脂肪酸Caを添加給与した場合に体脂肪の蓄積に及ぼす影響を、非破壊(超音波測定)と破壊(屠殺試験)の両面から明らかにする。

成果の内容・特徴

イネ科主体の傾斜草地に母子放牧の黒毛和種子牛に対して、哺乳放牧期(平均9~24週齢)の別飼飼料(自由採食)と離乳・終牧後の育成期(舎飼:平均26~47週齢)の補給飼料(給与上限日量:体重の1%)にそれぞれ0%と5%の脂肪酸Ca(パーム油由来でC18が主成分;TDN 176.8%)を添加給与した。基礎飼料は市販配合飼料(TDN 74%、DCP 9.5%)。育成期の粗飼料にはイネ科乾草を自由採食させた。

  • 5%の脂肪酸Caを添加給与した区の日増体量は試験期間の最小二乗平均で約0.1kg(P<0.05)生体重では同じく約16kg(P<0.01)、それぞれ無添加区よりも大きかった(表1)。性との交互作用はなかった。また、添加区の肥育終了までの通算日増体量(9~122週齢)は0.84kg、BMSが9と無添加区よりもともに良好であった(表2)。
  • 6-7肋断面の皮下脂肪の厚さは(非破壊測定)、舎飼飼養0%添加、放牧5%添加区及び同無添加区との間に差がなかった(P<0.05)。筋間脂肪の厚さは体重に対する依存度が高く、測定時の体重を含まないモデル分析では3区間に有意差(P<0.01)が認められたが、回帰を取り込むと区間の有意差は認められなくなった(体重との1次の回帰係数0.00448(P<0.01))(表1)。
  • 枝肉の筋肉、脂肪及び骨の重量割合は、雌、雄とも哺乳放牧期と肥育終了時では脂肪酸Ca添加の有無による差はなかった(表2)。しかし、育成期終了時(去勢牛)では放牧5%区の脂肪割合が6%ほど多くなったが(表2)、両区を併せた個体の枝肉中の脂肪割合は枝肉重量に対してほぼ同じ直線上にあり(図1)、両区とも枝肉重量に対して同等の脂肪含有レベルを示していた。

成果の活用面・留意点

  • 黒毛和種子牛の傾斜草地を含む放牧飼養や離乳育成期の発育改善に有効である。
  • 脂肪酸Ca添加給与の際の基礎飼料のTDN含量は74前後が、また補給飼料給与日量の上限は体重の1%とすることが望ましい。
  • 具体的な飼料給与法および飼料効率等は草地成果情報9号117頁を参照のこと。

具体的データ

表1 非破壊(超音波)測定による脂肪の厚さ

表2 脂肪酸カルシウム添加給与牛の枝肉構成

図1 枝肉重量と枝肉中の脂肪割合との関係

その他

  • 研究課題名:哺乳放牧子牛の栄養摂取促進法
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成5年度(平成4~7年度)
  • 発表論文等:脂肪酸カルシウムの添加給与が放牧子牛の皮下脂肪及び筋間脂肪の蓄積に
                      及ぼす影響 第89回日畜講演要旨 64、同90回大会予定