ヤギ乳腺における成長ホルモンレセプターおよびインシュリン様成長因子-1の遺伝子発現

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要約

ノーザンブロットの手法によって、反芻家畜における成長ホルモンの増乳の作用機序を解明するため、成長ホルモン・レセプター・メッセンジャーRNAの存在を山羊乳腺で確認した。さらに、成長ホルモンの作用を仲介するインシュリン様成長因子-1の乳腺における存在も確認した。

  • 担当:畜産試験場 生理部 生理第一研究室・生理第二研究室
  • 連絡先:0298-38-8645
  • 部会名:畜産
  • 専門:生理
  • 対象:家畜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

反芻家畜において成長ホルモン(GH)は乳腺に直接作用して増乳効果を示すのか?このことを証明するには、まず乳腺組織でのGHレセプターの存在を証明しなければならない。しかし、乳腺に存在するかどうかは、未だ結論が得られていない。従来、抗GHレセプター抗体を用いた免疫染色法によって、反芻家畜の乳腺のGHレセプター検出が試みられてきたが、検出されなかった。そこで、ノーザンブロット法により山羊乳腺における成長ホルモンレセプターおよびインシュリン様成長因子-1(IGF-1)の遺伝子発現について調べた。

成果の内容・特徴

    GHレセプターとIGF-1のメッセンジャーRNA(mRNA)がザーネン種泌乳山羊乳腺に存在することIGF-1が乳腺上皮細胞に存在することを証明した。すなわち、乳腺組織中GHレセプターmRNAは、4.2-4.5kbのバンドとして認められた(図1)。これは他の動物種や組織で報告されている分子量とほぼ同じであった。しかし、乳腺組織は肝臓組織と比べてきわめて微量な発現であった。同様に、IGF-1mRNAは、約9kbのバンドとして観察された(図1)。また、乳腺の組織切片の酵素抗体染色では小葉間乳管および小葉内乳管上皮細胞、および一部の乳腺上皮細胞にIGF-1の陽性反応が認められた(図2)。

成果の活用面・留意点

反芻家畜の乳腺でGHレセプターmRNAおよびIGF-1の存在が確認されたことで、GHが乳腺に直接作用する可能性が高くなった。GHレセプターの生理的意味および乳腺でのIGF-1の合成にGHがどのくらいかかわるのかは今後研究すべき課題である。

具体的データ

図1 ノーザン・ブロット解析によるヤギ乳腺および肝臓でのGHレセプターならぶにIGF-1mRNAの存在

図2 抗IGF-1抗体による酵素抗体染色によるヤギ乳腺におけるIGH-1の存在

その他

  • 研究課題名:泌乳制御物質の標的組織における作用の発現
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成3~6年度
  • 発表論文等:1)インシュリン様成長因子-1のヤギ乳腺組織における分布─免疫酵素
                        抗体法による検討─、第85回日本畜産学会大会講演要旨, p243 (1992)
                      2)ヤギ乳腺におけるインシュリン様成長因子-1の合成について、
                        第87回日本畜産学会大会講演要旨, p248 (1993)
                      3)ヤギ乳腺並びに肝臓組織中のIGF-1およびGHレセプターmRNA量
                        について、第88回日本畜産学会大会講演要旨, p138 (1994)